そうして始まる僕らのカタチ 4
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 バンッ! と派手な音をたてて、屋上のドアが開かれたのが聞こえた。俺も後を追って、そのドアに飛び込む。

 瞬間、視界に広がったのは夕暮れの赤い色。

(綾部!)

 ざっと見回したが彼女の姿は見えなかった。だけど、もうあいつに逃げ場はない。俺は全力疾走であがった息を整えながら、ゆっくり歩みを進めた。

 放課後の屋上には人影はない。日も落ちかけていて、風も強く吹いてる。だから肌寒く感じるはずなんだけど、今の俺には心地よいくらいの気温。

 屋上に隠れられるような場所はない。しいていうなら、給水塔のある辺り。だから見つけるのは簡単だ。

 そう考えてそこに視線を向けると、今まで静かだった屋上に小さい音が響いた。

「っくしゅん」

(上……?)

 ぱっと視線を上向ける。給水塔のある場所は、ここより高い所になる。そこから、くしゃみが聞こえたってことは。

 視線の先に予想通りの人間を見つけて、俺はあんぐりと口を開けた。

「お前……なんつうとこに隠れてんだよ」

「うぅ……」

 声を投げ掛けたその先には、夕焼けに負けないくらい真っ赤な顔をした綾部が膝立ちで俺を見下ろしていた。

「あー……とりあえず」

 さっきまでの憤りが嘘みたいに、俺は静かな声で言う。

「下りてこいよ。そこじゃちゃんと話出来ないだろ?」

「む、むりぃ……」

「――何で?」

 頼りない綾部の返事に、俺は眉を吊り上げた。この期に及んでまだ避けるか、俺を。

「こわいんだもん」

「何が」

「カオ」

「は?」

「成瀬、カオが怖い……」

「なっ」

 その言葉に少なからずショックを受けて、俺は言葉に詰まった。しかし綾部はそんな俺に構うことなく、か細い声で続ける。

「何か、知らないヒトみたいで。……成瀬のカオ見て、話出来ない」

「ンなこと言ったってなあ!」

 ガシガシと頭を掻き毟ってから、俺はまっすぐ彼女を見上げた。

「俺だっていい加減、逃げられてばっかでムカついてんだけど!」

 荒げた声に綾部がビクリと身を竦めた。そこに少し強めに風が吹きつける。

 なぶられる彼女の髪と、スカートと。

(――やべ)

 見ちゃいけないもんが視界に入ってきそうになって、俺は慌てて綾部から目を逸らした。それを訝しく思ったんだろう。綾部が怪訝な声で訊ねてきた。

「成瀬?」

「あー、あのな……」

 綾部のほうを極力見ないようにして、俺は口を開く。

「頼むから、下りてきてくんね?」

「でも……」

 渋る綾部に、俺は唸るように告げた。

「……スカート」

「へ?」

「見える……」

 その言葉に一瞬首を傾げる綾部。しかし、それの意味するところに気がついてバッとスカートを押さえつける。そして絶叫。


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