臆病すぎた卑怯者 6 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「教室でコクったときは……」 「好きだとしか言ってない」 「その後ずっと話さなかったの?」 「何となくタイミングがなくて」 だってわたしは見てしまったんだよ。 告白したあの時の、彼の困った表情。 そりゃ困るよね。びっくりするよね。 あの表情を見た途端、わたしは曽根の答えを聞くのが急に怖くなった。覚悟はしてたつもりなのに。有ちゃんのときみたく後悔したくなかったから言葉にしたのに。 だけどクラス中がわたしの想いを知っている今、彼を避けるなんてできるわけもなく。仕方なく今まで以上のテンションの高さで接して、曽根を煙に巻いているのだ。 そんなわたしの卑怯なやり口に、冴香はがっくりとうなだれた。 「あんたって子は……一体どうしたいのよ」 これじゃあ曽根が困る一方でしょうが。 彼女の科白に、胸が苦しくなる。 「だよねえ……」 力なく、わたしは笑った。 だって、ホントに怖かったんだ。 わたしが思ってたよりも、曽根の中のわたしは些細なもんだって。 曽根は答えを持っていない。そのことをガツンと思い知らされて、そこから逃げ出した。 だけど離れるなんて考えたくないから、今もまとわりついている。 ここにいるのは恋する乙女なんかじゃない。 ただの臆病な卑怯者。 わたしはそっと目を伏せて、そのまま机に突っ伏した。 何も言わない冴香の優しさが泣きたくなるほど痛かった――。 【続】 |