そうして始まる僕らのカタチ 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ ――わたしも、そうだったから。 「瀬戸さん、も?」 苦笑気味にこぼした瀬戸さんに、わたしは呆然とした声で問う。だって。 「あんなに幸せそうなのに」 「でも怖かったよ。曽根の本当のキモチを知るまでは」 そう言って瀬戸さんは話を続ける。 「わたしは曽根が好きだったけど、曽根の本音を聞くのが怖くて。拒絶されたらって考えたら、告白したくせに怖くなっちゃって。それで逃げ回って、曽根を傷つけた。曽根はちゃんと向き合おうって、いっぱい考えてくれてたのに、わたしはそれを聞こうとしないで、最後の最後まで逃げてた」 ――ちょっと似てるでしょ? わざと茶化すように言って、瀬戸さんは笑う。だけど。 「違うよ……」 わたしは緩くかぶりを振ってそれを否定する。 だって。 「だって瀬戸さんは、ちゃんと曽根くんに恋してるもの」 わたしとは違う。わたしが持ってる曖昧な気持ちとは違うんだ。 「わたしは成瀬のこと、そういうふうに好きなのかどうか、分からない」 分からない。知らない。 こんなに苦しくって、痛くって。成瀬を『好き』になったら、楽しいかなとか幸せかなとか考えてたことが嘘みたいで。 頭の中がぐちゃぐちゃになって、また泣きたくなって、俯いた。だけどそこで聞こえたのは、あっけらかんとした藤原さんの声。 「いいじゃない、分からなくたって」 「え?」 あまりの言い様に出かかっていた涙が引っ込んでしまった。呆気に取られたわたしを余所に、藤原さんは窓のほうを眺めながら言う。 「成瀬を傷つけたことを後悔してて、仲直りしたいと思ってるなら、今はそれで十分なんじゃない?」 「ええと、でもそれじゃあ……」 「綾部さんの中のキモチが恋でも、友情でも、綾部さんにとって成瀬は大事なんでしょ? このままでいたくないんでしょ?」 「う、うん」 気圧されながら頷くと、藤原さんはどこか聞こえよがしな声で続けた。 「謝るべきことは、成瀬のキモチを中途半端な態度で否定したこと。真剣なキモチから逃げたこと。たとえ綾部さんの成瀬への気持ちが恋じゃなくても、そこを負い目に感じる必要はないと思う」 それにね? そう言って藤原さんはこちらを見た。そして愉しそうに笑う。 |