そうして始まる僕らのカタチ 3
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「あー、とりあえずさ。難しいことは抜きにして、わたしの質問に答えてくれるかな?」

 眉間を揉みほぐしながら言う藤原さんに、わたしは頷いた。

「綾部さんは、成瀬のことが好き? 嫌い?」

「ええと……」

「これが恋だとか考えないで。ただ好きか、嫌いか」

 言い淀むわたしに、藤原さんは今までより強めの口調で言った。

 恋だとか、そういうことは考えないで。だったら何も迷うことはない。

「好き、だよ」

 そう思って口にした言葉は、何だかいつもと違う響きに聞こえた。

 藤原さんは納得したように首を縦に振ると、再び口を開く。

「じゃあ今の状況はつらいよね」

「うん」

 でも、それはわたし自身のせいだ。成瀬の『本気』から逃げて、彼を傷つけたせい。

「どうして成瀬が傷ついたって思うの?」

 藤原さんの問いかけはとても真っ直ぐで、逃げ場を与えてくれない。だけど、それに答えることで先が見えてくるなら――そう思って、わたしは考えた。

「それはわたしが『なかったことにして』って言って、成瀬のキモチを否定した、から」

 答えながら、わたしは感じた痛みに顔を歪ませた。

 ――何て酷いことをしたんだろう。

 成瀬はいつだって、わたしの話に耳を傾けてくれたのに。ヒトが聞いたら下らないと一蹴されそうな質問も、彼は苦笑しながらでも、呆れながらでも、それでもちゃんと答えを返してくれたのに。なのにわたしは『怖い』からって、逃げ出したんだ。

「あのね、綾部さん」

 両手を膝の上でギュッと握り締めて俯いてたら、それまでずっと黙っていた瀬戸さんの声がした。

「上手く言えないんだけど……。成瀬くんのキモチが『怖い』のは、成瀬くんがそれだけ真剣に綾部さんのこと、思ってるからなんじゃないかな」

「えと……?」

「だから、えーと……成瀬くんが真剣で、綾部さんはそれにちゃんと応えようと思ってて。でも『怖い』のが先に立って、上手く応えられないんだよね?」

 はっきりきっぱりした藤原さんとは違うけど、瀬戸さんも瀬戸さんなりに状況を整理しながら説明してくれる。わたしはそれに頷きつつ、彼女の話の続きを待った。

「誰かと本気で向き合うことって、その人が大切ならその分だけ『怖い』ことだって、わたしは思うんだ」


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