そうして始まる僕らのカタチ 3
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「あのさ、ちょっと訊きたいんだけど……成瀬、最近クラスで何かあった?」

「……は」

 その質問にわたしは固まった。だけど藤原さんは構わず、話を続ける。

「ここんとこ、ずーっと機嫌が悪いのよね。かと思ったら、何かぼけーっとして覇気がないし。部内は一応落ち着いてるから、何かあったんだとすれば家かクラスかなと思って」

 あの優等生があからさまに調子崩してるから、みんな心配しててね。

 やれやれといったふうに藤原さんはため息をついたけど、彼女だって心配しているのは明らかで。わたしは申し訳なくなって、肩をすぼめた。

「綾部さん……?」

 瀬戸さんがこちらを窺う。藤原さんも不思議そうにわたしを見ているのが分かった。

「ごめんなさい。……わたしのせいだ」

 その言葉に二人は顔を見合わせる。

 駄目だなあ。成瀬を傷つけただけじゃなくて、周りの人たちにまで迷惑をかけてるなんて。

「綾部さん」

 顔に髪がかかるのも気にしないで俯いたら、藤原さんがぎゅっとタオルを押しつけてきた。――柔軟剤のいい匂いがする。

「そのまま顔隠して、ウチの部室に行きなさい。……見られたくないでしょう?」

 しばらく人払いしておくから。

 そう言われて肩を叩かれて、わたしはようやく気がついた。

 じわりじわりと涙が溢れていることに。

「初璃」

「うん」

 静かな藤原さんの声に、瀬戸さんが頷いた気配がした。そしてわたしは瀬戸さんに手を引かれるままに、野球部の部室に案内された。


*  *  *


 野球部の部室は藤原さんが掃除したばかりだったからか、思っていたより随分と片付いていた。そこにあるパイプ椅子にわたし達は押し黙ったまま、腰かける。

「……二人とも部活は?」

 まだ湿り気が残った声でわたしが問うと、二人は困った顔で口を開く。

「いや、ねえ……?」

「おせっかいだとは思うけどさ」

 放っておけないし。

 声を揃えて言うと、また顔を見合わせる。

 ほとんど初対面の人に迷惑だけじゃなくて、心配までしてもらって――ますます申し訳なくなって、わたしはまた俯いた。

「あのさあ……」

 ひどく言いづらそうな口調で、藤原さんが話し始める。

「個人的なことだろうし、わたしは綾部さんと今日はじめて話したんだから、深入りする権利はないんだけど。目の前で泣かれちゃうとねぇ? ウチの部員絡みのことみたいだし」

 彼女はそこまで言うと、一旦口を閉ざす。おそるおそる顔を上げると、やっぱり困り顔の藤原さんがそこにいて。だけど彼女は目が合うと、にっこり笑ってみせた。




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