そうして始まる僕らのカタチ 3
しおりを挟むしおりから読む目次へ






 成瀬の言葉を真に受けるなら、つまり、そういうことなんだろう。『メーワクなのか』と訊かれたけれど、決してそんなわけではなく。

 でもわたしには、あんなに強いキモチを受けとめる自信がない。わたしが成瀬に抱いてる想いが、それと同じものだという確信がない。

 ある人は言っていた――その人を見るだけで幸せな気持ちになれるんだって。それが『恋』だって。

 それなら今、わたしが感じているものは何だろう?

 校舎が近づくにつれて、足取りが重くなる。そこに行き着くまでに、野球部のグラウンドの横を通って行かなくちゃならないから。

 さっき出て行ったときはまだ部活が始まってなかったから大丈夫だった。でも今は違う。きっとあそこには彼がいる。練習中だから、きっと気がつきはしないと思う。それでも、そこに居るのに声も掛けられないのが、いつもみたいに見ることすら出来ないのがつらかった。

 聞こえてくる野球部の掛け声に耳を塞ぎたくなっていると、そこに一際伸びやかな明るい声が響いた。

「走れ走れー―っ!」

 その声にひかれて、グラウンドを見やった。

(あ)

 中で声を張り上げてたのは、見覚えのある小柄なおだんご頭の同級生。

(瀬戸さんだ)

 クラスは一緒になったことないけど、選択科目が同じで少し話したことがある。そのときは確か美術部だって言ってたはずだけど。

(何で、ココに……?)

 不思議に思ってフェンスの中を覗きこんだ。中では部員の子たちが守備位置について、どうやらノックを受けているようで。瀬戸さんは疲れて動きの鈍った部員に向けて、ハッパをかけていた。

(マネージャー、やってたのかな)

 首を傾げつつ、そのまま何となく練習風景を眺めていた。そして、ふと気がつく。

 成瀬がいない。

 おかしいな。確かに話はしてないけど、彼が部活に行った姿は目にしている。それなのにいないなんて。

(何か、あったのかな……)

 まさかケガしたとか、そういうのじゃないよね? 思いついて胸がざわつき始め、ギュッとフェンスを握り締めた。

 カシャンと音がした。それと同時に。

「綾部さん!」

「きゃあっ」

 ポンと背後から肩を叩かれて、わたしは思わず悲鳴をあげてしまった。すると声の主がすまなそうな口調で言う。



- 110 -

[*前] | [次#]






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -