そうして始まる僕らのカタチ 3
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 苦々しい口調で怒ったキミが一瞬見せたのは。

 ひどく傷ついたような、そんなカオだった。



 彼とはじめて会話らしい会話をしたのは、一年生の夏休み前のことだった。

 その日は球技大会で、早々とサッカーで負けてしまったわたしは教室で一人、まだ中身が入っている缶ジュースとにらめっこをしていた。

「綾部さん…?」

「はい?」

 いつの間に人がいたのか。おずおずと声を掛けられて、わたしは目線を上げた。そこにいたのは、よく日に焼けた顔を困惑気味に引きつらせていた成瀬だった。

「なーに?」

 普段あまり話したことのない彼に、首を傾げて訊ねた。すると彼は頬を掻きながら、少し言いにくそうに口を開いた。

「ソレ」

「へ?」

「飲まねーの?」

 そう言って彼が指差したのは、わたしの前に置かれた缶ジュースで。

「成瀬くん、飲みたいの?」

「いや違くて」

 きょとんとして応じると、彼は呆れたように顔をしかめた。

「何か物凄い険しいカオで見てたから、そんなにマズイのかと」

「そんなことないよ」

 ふるふると首を横に振って、彼の言葉を否定する。すると彼はますます「解らない」といった様子で、眉をひそめた。

「えーとね」

 わたしが缶ジュースを眺めて考えてたこと。多分、彼はそれが知りたいんだろう。だからって、教えたところでマトモに取り合ってもらえるとは思わないんだけど。

 呆れられたり、馬鹿にされたりするのは日常茶飯事だったから、特に気にせずにわたしは口を開いた。

「缶の表面に、水滴がついてるでしょ?」

「ああ」

「何でかなあって」

 そう言うと、彼は目を瞬かせた。

 ほらね? やっぱり、そういう反応すると思ったんだ。

 もとより答えなんて期待してないわたしは、再び視線を缶に戻した。

 何だったかなあ……どっかで聞いたことあるはずなんだけど。

 缶に穴が空くほど見つめて考えていると、頭上からぽつりと声が降ってきた。


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