そうして始まる僕らのカタチ 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「冗談とかで言ったんじゃないけど……あんなふうに、へらへらと軽く言うような話じゃなかったよねって思って。だから……」 ああ、やっぱり。やっと気がついたわけだ。俺が叱ったイミに。 なら、俺がここで「分かったよ」と言ってやれば、綾部は元通りになる。前みたく、くだらない質問で俺を困らせる能天気な天然女に戻るんだ。それでいいじゃないか。またフツーに話せるようになるんだから。俺だって、それを望んでいたハズだ。 なのに、何で。 (何か……胸にズキッとくるんだけど) それが苦しくて、痛い。 何で俺はそんなふうに感じてるんだ? だけど、その正体をはっきり自分で理解するより先に、勝手に口が動いてた。 「『本気』になったらいけねーの?」 「え……?」 「好きになったら、メーワクなのか?」 「な……っ?」 思いもよらなかったんだろう、俺の言葉に綾部が狼狽えた。そのイミを理解して、頬が赤く染まっていく。 「な、んで」 両手で顔を隠しながら、綾部が言った。 「何で、そんなこと言うのぉっ?」 微妙に湿り気を帯びた声。それを耳にして、ヤバイなとは思ったけど。 だけど俺は言ったことを取り消す気なんて、さらさらない。 「びっくりしたけど」 拳を握りしめながら俺は言う。 「俺は嬉しかった。お前がそういうふうに思ってくれてて」 嬉しかったんだよ。 それは紛れもない、俺の本心で。だから冗談だったらタチが悪いと思って怒った。だけど、お前は否定しなかったじゃねーか。 なのに。 「勝手なことばっか、言ってんじゃねえよ……!」 ぎりっと歯を食いしばって、すれ違いざまに言い捨てて、俺はその場を立ち去った。 残されたアイツがどんな顔をしてたかなんて知らない。 知りたくもなかった。 (今更言われたって、遅いんだよっ!) 告白する前に、振られたなんて。 そんな惨めなハナシ、ありかよ? 【続】 |