そうして始まる僕らのカタチ 2
しおりを挟むしおりから読む目次へ







「ねみ……」

 翌日――俺は欠伸混じりにぼやきつつ、学校に向けてチャリを漕いでいた。意外にも友達がいのある二人のおかげで、多少気持ちは浮上したものの、やっぱり気がかりなモンは気がかりで。あまり眠った気がしないまま、朝を迎えた。

 いつにない怠さを纏って布団の上に身を起こして、今朝は朝練がなくて良かったと心から思った。

 先生方には悪いが、今日の授業は睡眠にあてさせてもらおう。

 そんな決意を固めながら、俺は単調にチャリを漕ぎ続けた。

 正門を通りすぎ、駐輪場に向かう。ほぼ決まっている定位置にチャリを止めて、校舎に向かおうと振り返ったそのとき。

 よく見知った人物を発見した。

 俺は呆然と、ソイツの名前を呼ぶ。

「綾部……」

「おはよう、ございますっ」

 つっかえながら言って綾部はちょこんと頭を下げた。相変わらず緊張しているようだが、どもってない分だけ昨日よりマシか。

「……はよ」

 それでもいつもよりずっと気まずい気分で、俺は低く挨拶を返した。

 綾部がすまなそうなカオで、こっちを見ている。

「何か、用?」

 用件なんか分かりきってたけど、俺はそう訊くしかなかった。すると綾部がおずおずと口を開く。

「話が、あって」

「……あぁ」

 そりゃそうだろ。そうでなければ、昨日散々避けまくってた人間を朝から捕まえにくるわけがない。

 俺が頷くと、綾部は視線を彷徨わせながら続きを口にする。

「こないだのことなんだけど、ね」

 こないだのこと――あの日の綾部の爆弾発言。それを、彼女はどうしたいのか。

 無表情に首を傾げて、俺はその続きを待った。そうして告げられたのは。

「聞かなかったことに、してもらえないか、な?」

「……聞かなかった、こと?」

 思ったより擦れた声で訊き返すと、綾部はぎこちない動作で肯定した。

 それは、つまり。

「お前の言ったことも、俺の言ったことも、なかったことにしろってことか?」

 何だかひどく息苦しい、嫌な気分で俺は言った。その声の厳しい響きに綾部は身を竦めたが、逃げ出すことはなかった。


- 106 -

[*前] | [次#]






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -