そうして始まる僕らのカタチ 2
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「珍しいな、ホント」

 心底意外そうな面持ちで曽根が言う。その横で間宮がワイシャツのボタンを留めながら、うんうんと頷いた。

「俺の機嫌が悪いのが、そんっなに珍しいか?」

『うん』

 ガタガタとロッカーから荷物を取出しながら訊ねると、ふたりはわざわざハモって肯定した。その返事に、俺は脱力する。

 コイツらの中の俺の評価って、どうなってんだ? そんなに悩みなさそうな、怒らなそうな、能天気なイメージなんだろうか。

 そんな俺の考えをよそに、間宮と曽根は互いに顔を見合わせながら口を開く。

「成瀬だって怒ることぐらい、あるんだろうけど」

「カンケーないとこに持ち込むようなことはなかったかんな」

「普段は上手く隠してんだろうけどね。それが今日はもろバレなわけよ」

「なんつうか、余裕がないカンジ?」

 代わる代わるに看破されて、居心地の悪い気分になる。思わず天井を仰いだ。

 余裕、か。確かにないんだろうな。今日一日、授業中も部活中も、今だって頭から離れないのはアイツの顔。

 真っ赤な顔で、いつもと違ってオドオドと俺を見ていた綾部の顔だ。

 おとといの爆弾発言を今更ながらイシキしてしまったらしい。ガチガチに固まっちまって、今日は一日中、会話が成立しなかった。話しかけても、どもるばっかで続かないんだ。

(やっぱアレはやりすぎたか)

 思い出して、嘆息する。


『本気にすんぞ』


 そう言ったのは、無自覚にとんでもないことばかり言いやがった綾部をちょっと困らせてやるため。アイツの言葉に良いように振り回されて、悔し紛れに言ってやったんだ。

 実際それは効果覿面で、綾部のヤツは面白いくらい俺をイシキしまくってるわけだが。

 もともと仲が良かった、好感のあった人間相手だから悪い気はしない。だけど困ったことに、どうやらアイツは。

(怖がってるっぽいんだよな……)

 単にイシキしてるだけじゃない。そんな空気を感じて、俺はあの発言を後悔したくなっている。アイツと会話が成り立たないってのが、意外に地味に堪えてるんだ。

 とはいえ、自分からアレだけの爆弾を落としておいて、逃げてるだけのアイツには正直ムカついたりもしてるわけで。



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