そんなハジマリ 6 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「わたし、ヘンなこと言った?」 「……言ったよ」 自分のした発言の衝撃がどれほどのもんだったか、まるっきり理解していない様子の彼女に俺はげっそりして答えた。すると綾部は不満げに、えーっと声をあげる。 「だって、そういう可能性もあるんでしょー」 「あ、のなあ……」 呆れ果てて、言葉もない。どこまですっとぼけてるんだ、この女は! ていうか、何で俺だけがこんなに動揺してるんだよ。そう考えたら悔しくなって、俺は綾部に意地悪く問いかけてやった。 「ナニお前、俺とそうなりたいの?」 「えっ?」 虚を突かれたように、綾部の動きが停止する。ざまあみろ。少しは慌てやがれ! しかし綾部は何やらぶつぶつと呟いて、ぽんっとひとつ手を打つ。そしてやけに明るいカオをして、言い切った。 「そうかもしんない」 「ぅおいっ!」 さすがに俺は焦って突っ込む。 「お前っ、何言ってるか分かってんのか! ヒトをからかうのも大概にしろよっ」 「からかってないよ」 ホントにそう思ったんだもん。 やけに静かな口調で、綾部は否定した。俺は赤面状態で、そのまま黙り込む。 「成瀬、面倒くさくてもわたしの話にちゃんとつきあってくれるでしょ? わたしが納得できるまで、ちゃんと説明してくれるし」 彼女は人差し指を一本、ぴんと立てて笑う。どこか恥ずかしそうに。 「だから何か困ったときって大体、最初に成瀬の顔が思い浮かぶんだよね」 ……やばい。 俺は堪らず顔を背けた。 いやホント駄目だって。 何でその笑顔が可愛いとか思っちゃってるんだ、ちくしょう。 |