そんなハジマリ 5
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「でも、それがどうしたら夜も眠れないような気持ちになるのか……わかんないんだよねー」

 そう言って、首を捻る綾部。俺は思考の軌道修正をしつつ、口を開く。

「そりゃ、見てるうちにその人の性格とか色々分かってきて変わってくんだよ」

 しっかりしてるように見えて、意外にヌけてたり。

 可愛らしいと思ってた子が、意外に男前な性格をしてたり。

「何ソレ。実体験?」

「ちげーよ、バカ」

 ニヤニヤして茶化してくる彼女を俺は半眼で睨んだ。一般論だっての。

「ま、逆にゲンメツする場合もあるんだろうけどな」

「いい意味でのギャップにやられるというわけですか」

 ふむふむと納得する綾部。そしてすぐさま次の話題に移る。

「じゃあ、イイ友達だと思ってた人が恋愛対象になるのも同じだよね」

「おー、そうだな」

 それもギャップにやられてっていうパターンだろう。ベタな展開だけどな。

 俺は適当に返事をしながら、残りのコーヒーを飲んでしまおうと缶を手に取る。そしてそのまま一口、口に含んだ。

 そこで投下されたのは、本日二度目の爆弾発言。

「じゃあ、わたしが成瀬に恋することもあるんだね!」

「ぶふっ!」

「成瀬っ?」

 一度ならず二度までも盛大なリアクションをかました俺に、慌てる綾部。彼女は持ってたティッシュを何枚か引っ張り出して、机の上を拭いてくれる。

「大丈夫?」

 その問いに、俺は大きく頷いた。でもいろんなイミで大丈夫じゃない。

 むせる喉を宥めながら、顔の下半分を手で隠す。咳き込んでるせいもあるけど顔が妙に熱い。うわ絶対赤いぞ、これ。

 せっせと後始末をしている綾部をちらりと見て、深々と息をついた。コイツ、自分で何言ったか分かってんのかよ。

 気持ちいいくらい朗らかな口調でンなこと言われて、動揺しないでいるなんて無理だ。俺がおかしいんじゃない。綾部がヘンなんだ。

 懸命に自分に言い聞かせて、何とか気を取り直した。喉の具合も落ち着いてきたところで、もう一度綾部に目をやった。

 そこには訝しげに首をかしげる彼女の姿。


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