真昼の星座 1 しおりを挟むしおりから読む目次へ 文字どおり、そこは。 閉ざされた宇宙。 「何故に真っ暗?」 放課後、学校の図書館(ウチの高校のは規模が大きい。なので図書室と呼ぶには違和感を伴うため、みんな図書館と呼んでいる)で待ち合わせたはずの友人が現れないので、俺――衛藤郁也(えとう・いくや)は校内を捜索のため歩き回っていた。 そして相手が元・天文部員だったことを思い出し、よく入り浸っていた場所に足を向けた。――その場所っていうのは、プラネタリウムだ。 どうしてなのかは知らないが、ウチの学校にはプラネタリウムがある。もちろん小さいものだが、それでもHR教室の半分以上の広さで一クラスが入るには十分な大きさだ。とはいっても、一般の生徒にはあまり縁がない。ここに入り浸るのは天文部の連中ぐらいのもんだ。事実、俺なんか授業で行ったのが二回ぐらいで、後は文化祭のときに付き合いで観に行ったのが二回。全校生徒のほとんどが、こんなもんだろう。 そんなわけで、そこには大抵カギがかかっている。開いてるのは天文部の活動日と、授業で使ってるときぐらい。そして今日は天文部の活動日に当たる、火曜日だ。約束のある身で部活に顔を出してるとは思いたくないのだが、仕方ない。ここ以外に思い当たる場所がないんだから。 校舎の三階にあるプラネタリウムに辿り着いた俺は軽くノックをした後、そっとドアに手をかけた。カギはかかっていないようだ。なので俺は遠慮なく、重いドアを開け放った。だが、そこに見えたのは真っ暗闇だった。 そして俺が思わず呟いたのが、冒頭の科白だったわけなんだが。 「あれ? もしかして衛藤?」 暗闇の奥から、耳慣れた女の声がした。俺は呆れた調子で応じてやる。 「もしかしなくても、俺だけど」 「悪いね。そこのスイッチ、入れてくれる?」 悪い、と言いながら全く悪びれた様子はない。 お前ヒトのこと待たせてるのわかってんの? いやわかってるけど無視してるんだ。こいつはそういう奴だ。 心の中で一気にそこまで毒づくと、俺は言われた通りにスイッチを入れてやった。するとゆっくりとだが、室内がオレンジ色の光に照らされていく。そして、俺は室内の奥へと目をやった。 そこにはプラネタリウムを操作する機材がある。俺の探し人は思った通り、そこにいた。機材の前に座って、何やら作業をしている。 俺は大きくため息をつくと、投げやりに彼女に呼び掛けた。 |