falsao 4
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 本音を言うと、少しばかり残念だと思ったのだ。彼女の、あのカオが見られなくなるのは。



 夏休み直前の、よく晴れたある日。神代学院高校は異様な熱気に包まれていた。

「美晴ちゃーん」

 中学時代から聞き慣れた声に呼ばれて、美晴は額の汗を拭いながら振り返る。

「どーよ? 八組バスケは」

「ああ。次の準決で2−2と当たる」

「2−2っていうと……」

「武村のクラスだな」

 近寄ってきた声の主――陽一にそう答え、体育館の前に立て掛けられたトーナメント表を改めて見た。その上部には大きく『球技大会』の文字が踊っている。

 昨日と今日の二日間で、この神代学院高校では球技大会が開催されていた。バスケ、バレー、サッカーの三種目でクラスマッチを行っており、美晴はバスケで参戦している。つい先程、試合が終わって――今後の予定を確認しに来ていたところだ。

「さすが中学時代に鳴らしてだけのことはあるねえ」

 美晴の隣に並び、陽一が感嘆の声をあげる。視線の先にあるのは『2−2』の数字――彼らの後輩である大亮の所属するクラスだ。どの種目も三年のクラスが数多く勝ち上がっている中、全ての種目で勝ち残っている。

「得意なのはバスケだけじゃない、と」

「身体が空いてる限り、出まくってるみたいだよー」

 球技大会の運営は体育委員会が中心だが、一応生徒会役員もかり出されているので、それなりに忙しい。にもかかわらず、大亮は大車輪の活躍をしているようで―― 一体、どれほどの体力の持ち主なのか。感心半分、呆れ半分の気持ちで美晴は腕を組んだ。すると、横で陽一がおもむろに口を開いた。

「ときに美晴ちゃん」

「何だ?」

「バスケの準決は午後からみたいだから……時間、あるよね?」

「ああ、まあ……」

 突然の陽一の言葉に、美晴はきょとんと瞬いた。陽一がニヤリと笑みを浮かべる。

「じゃあ、ちょっと俺に付き合ってくんない?」

 訊きたいことがあんだよね。そう言った陽一の不敵な表情に、美晴は顔をしかめて――それから諦めたようにため息をついた。

 厭な予感がする。



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