■大亮 しおりを挟むしおりから読む目次へ 勝って嬉しい花一匁 負けて悔しい花一匁 「うお懐かしい」 「ホント」 珍しく生徒会の仕事もなく、のんびりと帰路についていた。 そこで懐かしい光景を目にした。 夕暮れ、公園、子ども達。 響く歌声。 あの子が欲しい あの子じゃわからん 「わたし、あの遊び苦手だったな」 「何で?」 「最後まで残っちゃうんじゃないかって、びくびくしてた」 そう呟いた美夏を見て、そういえばと大亮は思い出す。 昔はわりと人見知りの傾向が強い彼女の手を、自分が引っ張り回していたことを。 「昔はお前、しおらしかったもんな」 「……どういう意味?」 唸るように言う美夏を、大亮はただ笑うだけでかわした。当然彼女は面白くなさそうに、頬を膨らませる。 確かにあの遊びは、結構えげつないと思ったことがある。人気者は真っ先に候補にあがり、そうでない者は取り残されがちだ。そこに悪意があってもなくても、最後まで取り残されればへこんだものだ。 だけど――彼女は知ってるだろうか。 その心細い思いをさせないために、自分が率先して彼女を候補にあげていたことに。 まあ今となってはその必要もないくらい、逞しくなってしまったようだが。 「大亮ー」 ふと歩みを止めた自分を美夏が振り返った。きょとんと首を傾げている。 「行こう」 「おう」 呼び掛けに応えて、大亮は美夏の隣に並んだ。そして歩きだす。 夕暮れ、公園、子ども達。 響く歌声。 この子が欲しい 正面きってそう告げて、その手をとるのはいつの日か。 【終】 |