意気地無しの憂鬱 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「わたし、ペットじゃないんですけど」 だから餌付するな、と言いたいのだろう。そりゃ、こっちだって餌付する以外に距離を縮める方法を知っていたら、そうするに決まってる。 「知ってますよ」 素知らぬ顔で答えてみせた。彼女はペットなんかじゃない。女の子だ。まぁ、猫可愛がりしたくなる所は共通してると思うが。 実琴は相変わらず不満気に唇を尖らせていたが、やがて諦めたように息をつき、エプロンを机に放り出した。そして何事か、呟く。 「どうしたの?」 聞き取れなくて訊ねてみたが、答えを得ることは出来なかった。 それより先に、バンッという大きな音が校舎中に響き渡ったからだ。何か大きな物が落下したみたいな。 二人は互いに顔を見合わせて、目を瞬かせて――同時に口を開いた。 『……何事?』 『意気地無しの憂鬱』終 |