falsao 9 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「何考えてるのよ、みんなして」 思いもよらない評価を受けた動揺で、何だか足元がぐらぐらした。覚束ない足取りで当初の目的地である学食に向かいながら、勇樹は急激なこの変化をもたらした人間たちを恨めしく思う。 「龍堂先輩に、美夏先輩……」 何考えてるんですか、と小さくぼやいて勇樹はぎゅっと眉根を寄せる。何だか泣き出しそうな気分なのは、彼らに褒められたことが嬉しかったからなのだろうか。もしそうなら、随分と自分はお子さまなのだなと勇樹は額を押さえた。 「……これじゃ思うつぼじゃない」 誰の、なのかはよく分からないが――でも、あれだけ頑なだった自分の決意が揺らいでるのは確かだ。面倒なことは大嫌いなのに。地味にひっそりと平穏な学校生活が送れたら、それで自分は満足なのに。けれど、彼らは勇樹を巻き込もうとしている。新しい可能性が待つ世界に。 「やっぱり、ずるい……」 自分の周りにいる『先輩』はみんな優しいけれど、その反面で驚くほどに強引な所もある人たちなのだ。そのことを今更ながら理解して、勇樹は本日何度目かのため息をついた。 頭痛の種が多すぎる。 【続】 |