無自覚症候群 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 手にした牛乳を飲み干しながら、俺は大亮をうかがった。ヤツはそっぽを向いて黙り込んでいる。 図星だろ。まったく。 まあ、何にしろ。 「お前が引き受けたら、必然的に俺らもだろ? 俺は別に構わないからな。お前らと何かやるのは楽しいし」 ニヤリと笑って言ってやる。すると大亮は心底イヤそうに俺を見た。 「勝手に言ってろ」 そう告げて、すくっと立ち上がる。そして隠れていたわりに周りを気にする様子もなく、ズボンに付いた埃をパタパタと払い落とす。 こちらを見下ろすことはないが、その横顔はさっきより幾分すっきりしたように見えた。 ホント世話の焼ける奴。 まあ手のかかる友人はコイツ一人という訳ではない。つい構ってしまうのは俺の性分だし、腹立たしいことがあっても付き合いをやめるつもりはないし。――まぁ、たまに八つ当たりのひとつもしたくはなるけどな。 何事もなかったかのように立ち去ろうとする大亮の背を見ながら、俺はそう考えて口を開いた。 「そういえば」 ヤツは立ち止まらない。ゆっくりと水飲み場の段差を越えていく。そして校舎に向かう階段を上って行くのを見送りながら、俺は声を投げ掛けた。 「美夏、会長にコクられたらしいぞー」 あ、コケた。 ずるっと階段を踏み外したらしい大亮を見て、俺は遠慮なしに笑った。 ざまあみろ。 これで動揺するくらいなら、さっさと自覚してはっきりさせろっての。 あっちにもこっちにも決着をつけなければならない友人を思い、俺は深く深く息をつく。 見上げた空は、やっぱり胡散臭いくらい爽やかな青色だった――。 【続】 |