falsao 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「……なら、いいけどね」 僅かな沈黙の後、陽一は諦めたように言った。内心ではどう思っているか知らないが、とりあえずは引き下がってくれたらしい。彼らしからぬ聞き分けのいい態度に驚きつつ、美晴はこっそりと安堵の息を洩らした。ここで余計なちょっかいを掛けられて、勇樹との関係を破綻させるわけにはいかない。残りの高校生活を穏便に過ごすために、彼女の存在はどうしたって不可欠なものなのだから。 ――今はまだ、必要なんだ。 あの人以外の人間に、そんな執着を抱き始めている――そんな自分に少しだけ戸惑いながら、美晴は再び窓の外に目を向けた。 視界に飛び込む、目が眩むほどの夏空。 その切り取られた空間に重なって見えたのは、一体誰の笑顔だろうか。 【続】 |