falsao 3
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 このままのペースで食べ続けたら、確実に倍に肥えていく。――絶対に。

「……あのー」

「何だい?」

 おずおずと話し掛ける勇樹に、美晴が頬杖をついて応じた。いつもながら余裕綽々な態度に、怖じ気づきそうになるが――自分のスタイル維持と健康管理のためだ。どうにか踏んばって、勇樹は口を開く。

「毎回、全部完食しておいて言うことじゃないとは思うんですけど」

「うん」

「しばらく、おやつ、いらないです」

「……何で?」

 不自然にぶつ切りな口調で言うと、美晴は心底不思議そうに首を傾げた。それはそうだろう。毎回、勇樹は大変満足して報酬を平らげていたのだから。それがいきなり『いらない』と言われて、すぐに納得出来るわけがない。ない、とは思うが。

(そこは何も訊かずに聞き入れて欲しかった……!)

 普段は察しがいいくせに、今のこの鈍感ぶりは何なんだ。勇樹は軽い苛立ちと、これから先の発言に伴う気恥ずかしさで、顔を赤らめる。

「だから、ですね」

「うん」

「和菓子は、確かに洋菓子とかに比べたらヘルシーだとは思うんですけど」

「うん」

「でも、甘いことに変わりはないわけでですね」

「うん」

「だ、から――っ」

 もうヤケだ。勇樹は覚悟を決めて、まっすぐに美晴を見据えた。レンズを射抜くようなような勢いで睨まれて、美晴はきょとんと瞬く。その表情を視界に入れたまま、勇樹は周りに聞こえないように出来るだけ声をひそめて言った。

「カロリーオーバーして、太っちゃったんですっ! だから、しばらく報酬は辞退させて頂きます!」

 言い切って、勇樹は顔を俯けた。ああ何だか知らないが、無性に恥ずかしい。何でそう親しいわけでもない男を相手に、自分の体重事情を暴露しなければならないのか。

 すぐさまここから逃げ出したいのをどうにか堪えて、勇樹は美晴の言葉を待った。――と、すぐに聞こえてきたのは初めて耳にする、美晴が吹き出す音。

「……っ!」

「笑うなっ!」

 相手が先輩だということを忘れて、勇樹は全力で抗議した。だが、美晴の笑い声は止まらない。

「神妙なカオして……っ、何を言うかと思えば、っ」

「笑いすぎです! 仕方ないじゃないですか! こっちは切実なんですからっ!」

「ああ、うん。確かにね。切実だよね、体重……っ」

「せ・ん・ぱ・いっ!」



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