8 道標 しおりを挟むしおりから読む目次へ でも、それは多分ないだろう。シーナとて理解はしているのだろうから。自身の意志を押し通すより、リラからの王命を無事成し遂げること――そちらのほうが重要だということを。 そして、アレスのことは――。 「彼が断ることは、まず有り得ないと思います」 「何故?」 静かに告げたマーサの声に、ランディが眉根を寄せた。マーサは笑みを浮かべる。弱々しく、そっと。その表情にランディが軽く目を瞠った。 浮かべた笑みをそのままに、マーサはゆるりと目線を外に向けた。シーナとアレス。二人が最終的に向かっただろう、その場所に思いを馳せて。そして、一語一語を噛み締めるようにして呟いた。 「――解けない『呪い』があるんです。彼にも」 ――九年前のあの日から、自分を責め続けるシーナと同じように。 第八話『道標』了 |