白のゆく先
これが僕らのベストポジションなんだと言ってみる
白のゆく先
諸国のお姫様たちには感服してしまう。
戦に出て行く夫の勝利を信じ、帰りを待ち続けるその姿は男たちに使われる形容とはまた違った意味で強い。
心配がない訳ではなかろう。それでも静かに城に留まる術を持っている彼女たちに、今度その心得を聞いてみたいと思っている。
「政宗さま、」
「なんだ?」
「明日は、どうかお気をつけて」
「Ha! Don't Worry」
出陣を明日に控えた今宵、隣にいる政宗さまを案じて仕方ないのは、夜空に浮かぶ月が黒に侵食されて頼りない光を放っているのも手伝ってだろう。
それでも自信に満ちた政宗さまの顔を見る事ができて、少しだけ気分が楽になったのは確かだった。
それまでの私は兵を率いて刀を振るう、小十郎さまと共に政宗さまの背を預けられた身、今のように鮮やかな着物に彩られ、しとやかに座るような女ではなかった。
身分違いも甚だしくも、妻としてお傍にいるのを許された事はとても幸せに思う。
しかしながら、刀を手離した今、私の世界は大きく変貌し以前と比べて屈折して見えてしまうのは、やはり元々の性分だからだろうか。
「Honey、そんなに怖い顔をするなよ」
「いたっ、」
コツン、では済まない程に突かれた眉間。
そこを押さえる私を見て、政宗さまはケラケラと笑った。
「そんなに俺が心配か?それとも…、」
ニヤリ、口角を釣り上げた政宗さまは、鋭い目付きで、でも、どこか楽しそうに私を見る。
「久しぶりに、刀でも握りたくなったか?」
やっぱり、至極楽しそうに問われる声色に刺激され、久々に戦前の高揚感が呼び起こされた。
何もかもがお見通し。その左目は、私の心内までもを見透かせるようだ。
だから遠慮はいらない。私も笑って答える。
「どちらも。ですかね」
「はっ!大そうな口利くじゃねぇか」
「やはり私には、姫様方のように大人しくしているのは無理がございました」
こう答えれば、政宗さまは再び楽しそうに笑って言う。
「最近はちぃとばかり背中が静かでなぁ。
―――久しぶりにひと暴れでもするか?」
ただ人斬りをしたい訳じゃない。戦場を体験し、待つだけのもどかしさを知った。
政宗さまがここへ戻ってこられるまで、生きた心地のしない日々を過ごすなら、
「はい、是非とも」
共に闘い、その背中をお守りする事に尽力させて頂きたいのです。
妻でありたく、臣下でもありたい。そんな私めは、強欲でありますでしょうか――?
end
title&word by 夜風にまたがるニルバーナ
★お礼
有難うございますぅぅ!!
戦いたい…というか政宗様と一緒にいたい乙女とそれを受け入れてくれる寛大な筆頭の愛溢れるお話に心打たれました!ズッキュン☆←
しかもこれが初バサラ夢っていうから本当信じらんないよね。
俺様バサラファン歴3・4年だけど、こんな素晴らしい夢書けません!面目ないわ畜生!
でも超嬉しいんで是非ともまたよろしくお願いしますわ←
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