無題




くつくつ

喉で押し殺した笑いさえ響く此処は
薄暗くてジメジメした地下の部屋
そこにいるのは真っ赤な衣装を身にまとい、長い襟足を一つに束ねた青年と
僅かなたるみもない黒い着物を身につけて、髪を乱雑に肩に掛けた少女の姿。

面白い事に、互いに笑っている。
今この状況を、常人が見れば異様な光景なのだろう。
そんな事も気にせずに、二人は笑う
楽しそうに


「幸村」


少女が青年を幸村、と呼べば
幸村と呼ばれた青年は、少女の名を呼び返す。

それを幾度繰り返しただろうか。
飽きることをしらなあ二人は互いの名を呼び合う。
ふ、と青年は顔を上げると、その地下の部屋に唯一取り付けられた窓を眺め、溜息をついた。


「もう、時間だ」
「ええ、もう時間ね」


そう言いながらも、少女は青年の手に指を絡めていく。
青年も動く様子など見せず少女の体に手を這わせる。
後、唇が交合えば吐息は熱くなり、青年は少女の上に跨る。

その青年の体を愛しそうに少女が撫でると、青年も熱い吐息を吐き出す。


「好きだ」
「私もよ」

「佐助に見つかったら、怒られるな」
「そうね。私、敵だし。孕んだらどうしよう」
「産めば、いい」
「そうね。産んでここで住めばいいよね」
「そうだ」

薄暗くてジメジメした地下の部屋
そこにいるのは長い襟足を一つに束ねた、筋肉質な青年と
髪を乱雑に肩に掛けて、その綺麗な肌を惜しげもなく露出し青年の下に寝転がる少女の姿。

二人は知らない。
この愛が常人からしてみれば、歪んでいることに。

それでも
二人は幸せなのだから。

少女は青年が自分を監禁していることにも気がつかず。
青年は少女が弱ってきていることにも気がつかず。







二人は幸せなのだから。









★お礼

うおおおお!!
有難うございます!二人の微妙な関係にハァハァしっぱなしで御座います(キモ)。妄想が絶えませんぞ!
つぅか…監禁って(´∀`*)←
めっちゃ素敵です。愛あればどんな仕打ちだって受けられる緋桐さんです(落ち着け)。
あ、題名はないようでしたので、無題表記させて頂きました。


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