ことの起こりは数時間前に遡る。 俺はいつものように親友かつクラスメートの"鈴原斎"(すずはら・いつき)と屋上で昼休みをエンジョイしていた。
……そういえば俺の自己紹介がまだだったな。俺は"錐川竜飛"(きりかわ・りゅうひ)。県下最大のマンモス私立高校に通う二年生だ。
「なあなあ、竜飛ー。今日、駅前で遊ばね?」
斎は昼飯のパンをかじりながら言う。駅前で遊ぶって何して遊ぶんだよ。
「んー…そうだなあ…。特にはないけど、そこらへんぶらぶらしてればいいんじゃね?」
質問に質問で返されても困る。斎の適当さは昔から変わらないようだ。
斎は鼻をふふんと鳴らして、
「人生楽しければそれでいいんだよ」
満面の笑みでそう言った。 そこはあまりえばるところじゃないと思うが、人生楽しければそれでいい論には俺も同意なので何も言うまい。
「あーあ、何か不思議なこと起こってくんないかなあ」
斎は口をアヒルにしてぶつくさ言っている。不思議なことか…。確かにこうもほとんど毎日学校に行くという行動の繰り返しだとつまらないところもある。世界が破滅するだとかそういう不思議なこと以外なら、たまには起こってくれてもいいと思う。
「だよな!竜飛もそう思うよな!」
斎は満面の笑みで俺の背中を勢いよく叩いてくる。ものすごく痛い。
俺がすごい痛みにうなされていると、その瞬間勢いよく屋上のドアがばあんっと開かれ、
「あーー!!!!!!!二人ともこんなところにいたのね!!」
とうちのクラスの学級委員長がずかずかと俺たちに近付いてくる。
「今日の昼休み、錐川くんと鈴原くんは先生に職員室に来なさいって言われてたじゃない!」
こいつは"聖史櫻"(みよし・さくら)。さっきも述べたようにうちのクラスの学級委員長である。 斎は左手をひらひらさせながら
「まあまあ聖史さん、そんなに怒らなくてもいいじゃ「怒るわよ!!」」
聖史はどうやらものすごく怒っているようだ。
「当たり前でしょ!錐川くんたちがちゃんと職員室に行ってれば、あたしは捜しにいかずに済んでお弁当食べれてたんだからね!」
食べ物の恨みは怖いもんな…じゃなくて。そもそも担任自ら捜せばいいじゃないか。学級委員長だからって何でも聖史に頼みすぎだぞ。 とか担任の呼び出しを無視している俺が言えた口じゃないけど。
「今から職員室に行ってもらうからね!!いいわね!?」
聖史は相当カンカンなようだ。やはり食べ物の恨みは恐ろしい。
そんなこんなで俺と斎は聖史に半分引きずられながら職員室に向かうこととなったのである。
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