「バカのくせに結構鋭いのね、竜飛」
大変失礼な台詞が聞こえたほうへ目をやると、そこにはニ頭身のテルルがいた。
「"今の"ウランには秘密よ?」
"今の"?
「実はあの子、自分が他の元素に狙われているのを知って、あたしに記憶を忘れさせてほしいって頼みにきたの。狙われている理由がわからないのもあるし、何かきかれても答えれないように自分の能力の全てを忘れたのよ。あ、この話はあなたと出会う随分前の話ね。だから、そういうことで人間サイズになる方法も、エネルギー摂取の方法もわからないから、人間サイズに"ならない"んじゃなくて、"なれない"のよ。…まあ、自分が元素であることと、まわりの人のこととかは覚えてるけどねー」
あー、なるほど。 テルルは話が終わったと同時にリンに向かって、
「あら、あなたいたの?てか、そんなに胸でかかったっけ」
リンはまたはち切れそうなくらい頬をふくらませて、
「それ、コンプレックスなのう…。今まではさらし巻いてたんだよう」
「あ、忘れてた!!てか、お前!!嫁ってどういうことだ!!俺、勘違いされちまったじゃねえか!!」
リンはテルルを見たまま、首を横にふって、
「違うよう。あれは、うーちゃんの嫁ですっていう意味だよう。りゅーくんみたいなバカな人の嫁になんかなるわけないでしょ!」
ストレートに失礼なことを言うな。カルシウムにしろ、テルルにしろ、失礼なことしか言えないのか、元素(こいつら)は。 あと、あの言い方だと確実にみんな俺の嫁だと思うからな?
「実はそれが狙いだったり♪」
こいつ、絶対性格悪いな。
「てか、ウラン。貴様、嫁いたのか」
俺はリンからウランを奪って、つまみあげる。
「…違う…それも嘘」
「もう、うーちゃんったら照れ屋さんなんだからー!!嘘だなんてひどーい!!」
「嘘なんだ!本当だ!」
どっちなんだ!
「嘘よ。だってウランには彼氏がいるもの」
…彼氏?
「それも嘘だっ!」
「実はそうなのう…」
リンも本当だって言ってるじゃないか。あ、リンの言うことは信頼しないほうがいいんだっけ?
「この二人は腐女子で…!!」
腐女子…?そういえばさっき、テルルが言ってたな。鐘城族のことも。
「あなたは知らなくていいのよ、錐川竜飛。あなたは黙って、あたしたちの妄想要員になっていればいいの」
なんだよ、妄想要員って。
「あとさ、うちの学校の制服着てるけど…リン、お前も潜入してるのか?」
「うん!一年生に潜入してるよー!」
なんであえて一年生なんだ。
「高校生活を精一杯楽しむためだよう。こんな経験、もう一生できないかもしれないしね!ちなみにカルくんは二年生!」
そうだ、お前ら以外にも潜入してるやついるのか?例えば…保健室の先生とか…。
「ありゃりゃ!気付いてたのう!?そのとおりだよう!保健室の先生はヨウ素ちゃんなのう!!」
ヨウ素か…。他には?
「いるけど、教えてあげない!理由は楽しみがなくなるから!自分で捜してみて、発見したほうが楽しいでしょ!」
いや、自分で捜そうとは思ってねえよ。…まあ、確かに言われてみたらそうだな。自分で見つけたほうが楽しいのはわかる。でも、敵も紛れてるんじゃないのか?
「さあ?リンは味方しかしらないよう…。味方というか友達?みんなでお宝探ししてるから、みんな敵っていえば敵なんだけど…」
そうか。俺がききたかったのは、ウランを狙っているほうの敵のことだったんだが…。この言い分だと知ってる風でもないな。すると、俺の心情を読んだのか、テルルは、
「その線はありえるわ。もうすでに潜入して見張ってるかもしれないわね」
と言った。
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