「違う。お前じゃない。あの女だ」
「まあっ!!カルくんこそ、こんなところで何してるのう?」
女は不機嫌そうにカルシウムを見遣る。
「ていうか、あいつ誰!?」
と、俺が言うと、女は胸をえっへんと張ってから、
「聞いて驚け!あたしは原子番号15番のリンだよう!」
「リンって何」
女はほっぺをパンパンにふくらませて、
「何で知らないのう!?嫌いよ!りゅーくんなんて大嫌いよっ!!」
ぷいっとそっぽを向いた。 りゅーくんとは誰だ。俺のことか!?
「知らないのは無理もない。こいつはバカだからな」
全然フォローになってないんですけど、カルシウムさん。
「それより…お前、これ落としてたぞ」
カルシウムはくまのぬいぐるみを出す。どこから出したんだ、ああ、はなから持ってたのか。
「くまちゃん!!」
リンはくまのぬいぐるみのほうへ猛ダッシュ。そのとき、ウランをぶん投げてウランは木の幹にゴツンと激しい音をたててぶつかる。 さすがにその衝撃でウランは目覚めたようだ。
それから、リンの存在に気付いたようで、
「げっ、リン」
と目を丸くして驚いていた。
「うーちゃん、起きたあ?」
リンはくまのぬいぐるみを腕に抱えて、ウランの顔を覗き込む。
「うーちゃん、小さいままなのう?大きくなれないのう?」
ウランは首を縦におろす。 他のやつらは大きくなれるのに、何でこいつだけなれないんだ?
「普通の人間サイズになるにはエネルギーが必要。エネルギーを摂取するには俺だとカルシウムを含んだもの、リンだとリンを含んだもの、ウランだとウランを含んだものを食べないと駄目なんだよ。ウランを含んだものなんてなかなかないからな、小さいままのほうがエネルギーの消費が限りなく少ないから…。そういう面では窒素は相当強い。空気があるかぎり、どこにいてもエネルギーが摂取できる。エネルギーは戦闘のときも必須だからな。俺たちの身体はそれぞれの元素だけでできてるから、治癒の面でもエネルギーは必須だし…」
なるほど。そういうことか。なら、窒素最強じゃねえか。ウランとか不利だな。
「確かにエネルギー面で言えば、はるかにウランのような放射性元素は不利だ。でも、その分放射性元素は少量のエネルギーで莫大な能力を発揮するから厄介なんだよな」
確かにそれは厄介だ。 ん?でも、それだと"なれない"んじゃなくて"ならない"んじゃないか?なんで"なれない"んだよ。
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