家につくなり、窒素は好き放題していた。お菓子を食べながらテレビを観、馬鹿笑いするわ、さっきまでテレビを観ていたかと思えば俺のP○Pを夢中でプレイしたりと忙しいやつである。
そんな窒素をよそにウランは窓から外の景色を眺めているだけである。 俺はそんなウランに話し掛けてみたが、ウランはぷいっとそっぽを向いて俺の話を聞こうともしない。 …っ、こいつ結構厄介だぞ。
そんな俺を見て窒素は
「こいつはなかなか懐かないんです。誰を相手にしてもそんなかんじなんですよ」
そう言ってまたP○Pに視線を落とす。 ほう…ツン全開ですか。デレの一欠けらもないと。
俺はウランのほうをちらりと見遣る。あいつはまだ不機嫌そうに景色を眺めているだけだ。
あ、そういえばと俺は冷蔵庫を開く。中から一口チョコレートを取り出し、ウランの目の前にちょこんと置いた。 ウランは片眉を吊り上げて怪訝そうに俺を見る。
「食べ物だ。お前、ずっと寝てただろ?腹減ってると思ってな。元素って何食べるかわかんないから、テキトーにチョコレート買ってきてたんだ」
ウランは目の前に置かれているチョコレートを見たことないものを見る目で見、チョコレートを包んでいる袋をとって、恐る恐るチョコレートをかじる。 瞬間、先程のしかめっ面が一気に目をキラキラさせている。その後はチョコレートをぱくぱくと猛スピードで頬張り、あっという間に食べ終わった。 そして、キラキラした目を俺に向け、
「これはなんだ!?お前はこれをいっぱい持っているのか!?」
うおお、初めて喋った!
「これはチョコレートっていうんだよ」
「チョコレート…」
ウランは中身がなくなったチョコレートの袋を見て、頬を染めている。こいつを見遣ると口のまわりと頬にチョコレートの食べかすがついてるじゃないか。 ちょっと可愛いかもとか思った俺、爆発しろ。
「…いっぱい持ってるというか、まあ買えばいくらでも…」
とか俺がよそよそしく話すと、ウランは顔を真っ赤にして
「オレ、ここに住むの、ボロいし狭いし嫌だったけど、今からオレはここの住人になる!」
ボロくて狭くて悪かったな。そんでもって何も顔を真っ赤にして言わなくてもいいじゃないか。てかチョコレートだけでこんな展開になるとは…思わないよなあ。
その光景を見た窒素は目を見開いて、
「チョコレートパワーすごいんです…!!ちぃにもよこせ!!」
とか言って、ウランもまだ食べると言い出し、今日一日で一口チョコレートの山がはけてしまった。
「また買っとけよ」
と窒素は爪楊枝を口にくわえながら言う。
実にしっちゃかめっちゃかな展開だが、まあこれでウランが懐いたというか、ツン全開ではなくなってよかったんじゃないか。
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