元素本編 | ナノ




きゅー






「記憶はあとでテキトーにやっておくから好き勝手しちゃいなさい!」


窒素は大きな溜息をついて、ダイナマイトを男二人に投げた。瞬間、目の前はカッと明るくなり、ドッカーンという威勢のいい音を鳴らしてから眩しさは姿をくらました。


男二人はまるこげである。しかも生きている。よくもまあ、生きていたな。これが二次元の特権か…?


「さあて制裁を加えたところで、記憶をいじりましょうかねえ」


テルルはお怒りモードながらも実に楽しそうである。テルルはぱちんと指をならした。瞬間、先程のダイナマイトの音でやじ馬に来ていた人々が「なんでここに来たんだっけ」とかダイナマイトの件がなかったことのようになっていた。
男二人はもちろん、フード女に弓削香と呼ばれていた女までもダイナマイトの件を忘れていた。
そのことを覚えているのは俺とフード女、窒素にウラン、そしてテルルだけだった。


そのあと、テルルはもう一度指を鳴らし、今度は何をしたのかと思えば、男二人が抱き合ってるではないか。男たちは二人で愛してるだの何だのと気持ち悪いことを言いまくっている。テルルはその光景を見て、眉を片方だけ吊り上げて、


「…やっぱキモ男がやると萌えないわね。萌えを補充しようと思ったけど、こいつらでは萌えるどころか吐き気がするわ」


と言って、再び指を鳴らす。瞬間、男たちはいきなり怯えだし、うわあああと大声をあげながらその場を去って行った。


何をしたのかと問えば、


「ああ、今度はね、まわりの建物や人が化け物に見えるように設定したの。彼らは一生恐怖で怯えながら過ごすのよ」


うわあ、相当怖いこと言ってますよテルルさん。しかも真顔で言うな。


「まったく、アニ○イトの袋を持ってるってだけで襲うんだから。腐女子狩りをするやつなんて爆発すればいいわ」


そんなこんなで弓削香という女はテルルにお礼を言いまくり(ダイナマイトの記憶がないため窒素には言ってない)、フード女のことを呼酉(ことり)と呼び、フード女に抱き着いた。


そのとき、びゅうっと大きな風がふき、フード女のフードがとれた。薄い色素の髪が風でぐしゃぐしゃになる。その様子を眺めていた俺は、一瞬沈黙し、次の瞬間には「あーーーっ!!!!」と大声を出していた。


そう、フード女のことを俺は知っていたのだ。うちのクラスの不登校女、"鐘城(かねしろ)呼酉"であった。小中高と一緒の学校だったのでよく覚えている。まあ、高校では二年生になってからも不登校してるからな、こいつは。中学時代も不登校だったし、あまり接点ないっちゃないけど、むしろ逆に不登校だったから知ってるっていうのもあるしな。
鐘城の隣にいるポニーテール女もよく見ると、知っていた。"鎧塚(よろいづか)弓削香"だ。二人とも俺のクラスメートであった。こいつら二人、お互いの下の名前を呼び合っていたが、俺は人の下の名前までいちいち覚えてないからな。苗字だけで限界だ。気付かないのも無理ない。


鎧塚はやっと俺に気付いたようで、「錐川くん!!?」と驚いていた。
一方、鐘城は鎧塚の台詞をきいて「え…!?あの錐川!?」と言っている。


まあ、無理もないだろう。俺は中学時代までは太っていたからな。高校生でやっとダイエットに成功して今の姿があるってわけだ。不登校の鐘城は俺が痩せたことを知らないはずだ。…あの忌まわしい過去は忘れたいがな。


まあ、こうして俺たちは別れ、それぞれの帰路についた。







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