そんなこんなで俺たちは屋上についた。
放課後に屋上に来るやつなんて他にはいないだろうと思うが、一応念のために周囲を見渡す。思ったとおり、屋上には俺たち以外人っ子一人いなかった。
鋼島を見遣ると、どう切り出せばいいのか悩んでいるらしく、黙りこくって俯いている。 俺もどう切り出せばいいのかわからん。先程言ったようにウランを摘みあげればいいのかもしれないが、もし鋼島が元素持ちじゃなかったら大問題だ。きっと鋼島も同じことを考えてるに違いない。あ、でもウラン寝てるからごまかせるんじゃね?
俺があーだこーだ考えてるうちにさっきと同様、鋼島は俺より先に口を開いた。
「俺の鞄から聞こえただろ…。声が…」
鋼島はそう言ってゆっくりと鞄を開く。多分鋼島は賭けにでたのだろう。…まあ、俺も99%元素だと思ってるけどな。 鞄のチャックが開くと同時に中から二頭身の生き物が飛び出してきた。見たかんじ女っぽい。
「ぷはあっ!!鞄の中が暑すぎてボク、死ぬかと思ったよ!!」
そいつは空中をぶんぶんと飛び回り、ある程度したら――気が済んだのだろう――鋼島の肩にとまった。
「こいつは元素だ。俺が引っ越してきたときにはもうすでに今の俺の家にいたんだ」
名前は?と問えば、
「ヘリウム」
と答えられたのだが、ヘリウムってなんだっけ?←
「風船の中に入ってる空気とか、変声ガスとしてでも有名だよ!」
とヘリウムは俺のまわりを飛び回りながら言う。元気なのはいいことだが、こうも自分のまわりを飛び回られるのは欝陶しいな。
「それより…君も元素連れてるんでしょ?ボクにはわかるよ!あくまで勘だけどね!」
ああ。お前の勘は大当りだ。というかお前ら元素は仲間を感知することができるのか?
「んー…とくにこれと言ってそんな能力があるとは言えないなあ…。そういう能力をもったやつもいるかもね!」
とりあえず口を開くたびに俺のまわりを飛び回るのはやめてくれ。
「…てなわけだ。ヘリウムの言ってることが本当なら、君も連れてるんでしょ?」
ヘリウムが俺のまわりから離れ、鋼島の肩に再びしがみついたと同時に鋼島は口を開いた。
うん、まあそうだな。こいつは摘みあげたほうがいいのか?寝てるけど大丈夫だよな。俺は自分の胸ポケットに手を突っ込み、ウランを摘みあげようとしたが――
「いない!!!!?」
俺の胸ポケットはからっぽだった。
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