「闘えないやつを前にして二人がかりとは卑怯ですね」
俺は恐る恐る声のしたほうを見た。そこには――歩道橋の柵の上にはラドンとは別の少女とラジウムとは別の少年がいた。
ラドンは一気に顔を恐怖の色に変え、
「なっ…なんでお前たちがっ!!」
ラジウムは諦めたのかラドンに合図を出し、それを見たラドンは
「今回はこのへんにしといてやりますです」
と残して二人とも俺の目の前から消えた。俺は緊張がほどけたのか立てなくなり地面に座り込む。いや、まだだ。まだあと二人いるだろう。
「安心しろ、人間。ちぃたちはこいつの味方なんです。助けてくれて感謝するんです」
少女はそう言って俺の胸ポケットの中にいるウランとやらを摘みあげる。
「ほら起きろなんです。本当だったら今すぐにでもこの人間の記憶をいじってちぃたちのことを忘れさせるはずだったのに…あいつはどこに行ったんですか」
なんか記憶を忘れさせるとかどーのこーの言ってますが…?
「ちっ。しょーがないんです。おい、人間。ちぃたちの存在に疑問があるんだろ?お前、ちぃたちに協力しないか?そうすればちぃたちのことを教えてやるんです」
何言ってるんすか?協力?いきなり何だ。
「さっきのに巻き込まれてたら少しは気付いてると思いますが、ウランは狙われてるんです。どうしてかはちぃたちもまだ知らないがな。それで貴様に協力してほしいというのは…今ウランは元素としての力を使えないから、敵に見つかれば一発で捕まるんです。だから、そうならないためにお前がこいつを匿ってやってくれないですか?」
そんなのお前らがやればいいだろ。
「ちぃたちはこれでも結構忙しいんです。他にもやらないといけないことがあるんです。足手まといを連れていくわけにはいかないんですよ」
いきなりそんなこと言われても…。それに俺はお前らのことを全く知らない。元素ってことしか…。
今度は少女ではなく、少年が口を開いた。
「時間がないから手短に言わせてもらうけど、俺たちはお前ら人間の姿をしているけど全く違う生き物だ。詳しくはこいつにきけばいい」
そう言って少年はウランのほうを指差す。てかマジで俺にこいつの世話をしろって言うのかよ。
「世界が破滅してもいいなら拒否っていいんです」
……は?ちょ、ちょちょ、ちょっと待て。この問題は世界が破滅するような問題なのか。
「そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。敵の考えてることがわからない以上、何とも言えない」
「とりあえずちぃたちは先を急がないといけないんです。人間、ちぃの携帯番号教えとくから何かあったら電話してこいなんです」
人間と違う生き物って言ってたくせに携帯電話は活用してるのかよ。
「お前、名は何というんですか?」
錐川竜飛。そういうお前は何ていうんだ。
「窒素でいいんです。あ、ちなみにこいつはカルシウム」
と窒素は少年のほうを指差し、
「そんでお前に預けるのはウラン」
と窒素は摘んでいたウランを俺の胸ポケットに戻した。
「召使代わりに使うといいんです」
ウランはそんな扱いを受けているのか。
「というわけでよろしくなんです」
窒素は俺に手を振り、カルシウムとともに俺の目の前から消えた。
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