「可愛いー!!ほっぺぷにぷにだよ!!生きてるみたい!!」
聖史は人形のほっぺをつつきまくり、斎は「わーほんとだ。マジで生きてるみてー」と言いながら人形の手足を引っ張っている。 そこで聖史が手の平をぱんっと叩き、
「決めたっ!!あたし、この子連れて帰る!!」
「おいおい。これ、落とし物かもしれないんだぞ?持ち主がなくして困ってるかもしれないじゃないか」
と、呆れたように口を開く斎。
「いいじゃない。持ち主ももう探してなんかないわ」
聖史は強引に斎から人形を取ろうとする。斎も負けじと人形の手足を引っ張って…聖史と斎の人形の取り合いが始まってしまった。あああ、このままじゃ人形破れるぞ。人形でも破れるシーンは拝みたくない。聖史と斎は引っ張り合いを続け、もし俺が人形の立場だったら今すぐにでも目覚めて二人を蹴飛ばすだろう。まあ、もの言わぬ人形はそんなことできないだろうけ……ど!!?
俺が頭の中で言い終わる前に人形は小さな足で二人を蹴飛ばしていた。
「ぎゃあああああ!!!!動いたああああああああ!!!!!」
と、斎。
「えっ!?ええっ!!!!?ふえええええええええ!!!!??」
と、聖史。
二人は目が点になっていた。当然ながら俺も。
人形は宙に浮いたまま、不機嫌な顔をして俺たちを睨んでいる。ほう、こいつは浮遊することができるのか。
しばらく沈黙が続く。聖史と斎の二人は目が点のまま、ぴくりとも動かない。人形も話せないのか話す気がないのか、一向に口を開きそうな様子もないので、しょうがないから俺がこの沈黙を破ることにした。
「お前は何d『ガシャーーン!!!』」
俺が台詞を言い終わる前に廊下の窓ガラスが大きな音をたてて割れた。俺は必死でガラスの破片から自分の身を守るために身体をふせた。ふせたはいいが、背中と腕は直撃をくらって血だらけだ。聖史と斎も先程まで固まっていたが、この音で我に帰ったのか、二人ともふせている。ふと割れた窓のほうを見ると、一人の見知らぬ少女がいた。着ている服を見た限りではこの学校の生徒ではなさそうだ。
「師匠、捜したでありますですよー?」
師匠?誰だ、それ。
「あ、丁度いいでありますです!そこの人間!師匠をこっちに渡してくださいです」
そう言って少女は金髪二頭身の生き物を指差す。どうやらこいつが師匠とやららしい。 その師匠は少女に指を差されるなり、俺の制服の胸ポケットに隠れやがった。こいつはあの少女のところに行きたくないのか?
「ほら人間!早く渡すでありますです!」
俺はちょっとばかし考えて、小さく深呼吸をしてから、
「嫌がってるやつを渡せるk『ガッ!!』」
また俺の台詞は遮られた。台詞全部言わせてくれよ。 一瞬のことだった。少女はどこから出したのか大きな鎌を振りかざし、ひとふりして俺のすぐ横の壁をえぐった。俺は聖史と斎みたいに目が点になるどころか、マジで殺されるという恐怖にかられたのかは知らないがいつの間にかその場から走って逃げ出していた。 少女はすぐさま鎌を壁から引っこ抜き、俺を追い掛けてくる。そのときの聖史と斎がどうであったかは気にならない。ただがむしゃらに俺は逃げまくった。
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