「何だ、これ」
僕の名前は<枝幸・芙希>(えさし・ふき)。そこらへんにある一般中学に通う二年生だ。 今日もいつものように学校から家に帰ってきたらポストをみるという習慣を行っていたところ、差出人の住所も名前もない真っ黒な封筒があった。
「ねーちゃん、これ知らない?」
「差出人が誰かわかんないなら誰も知らないでしょ?あたしにきいたら何でもわかるってわけじゃないんだから」
こいつは僕の姉の<枝幸・茉莉>(えさし・まり)。大学生なんだけど、もうすでに今年度分の単位はすべてとりおわったらしく、今は家でグータラざんまい。
「とりあえず開けてみたら?」
「いやいや!開けたら契約完了みたいなわけわかんないのだったらどうすんだよ!」
「んー…手紙でそれはないでしょー。ま、そうだったとしてもそのときはそのときで」
どんだけ適当なんだよ! ほんと当てにならない姉だ。 ん…待てよ?よく見たら僕宛てにきてる手紙じゃん!差出人不明ばかりが気になって全然みてなかった。 僕はとりあえず当てにならない姉は放っておいて、自分の部屋に行った。もちろん手紙も一緒に。
「…なんなんだよ、これ……」
部屋につくなり自分のベッドに腰掛け、手紙を封筒の上から触ると物体が一つ入っている。なんかほんと怖いなー。 でもいつまでもうじうじしてるわけにはいかないし…色々考えてもいい策が見つかるわけでもないし…結局開けてみることにした。
「うああ、どーなっても知らないっと!」
封筒を勢いよく開け(ほとんど裂いたようなかんじ)、中身を確認する。 中身は種が一つと紙切れが二枚。 とりあえず紙切れに書いてある文字を僕は読んだ。
『おめでとうございます!アナタさまは選ばれた人でございます!この種はアナタさまの夢がつまった世界に一つだけの種でございます。アナタさまはこの種を育て、花を咲かせ、果実を実らせることによって、ご自分の願いを叶えることができるのです。この文だけではよくわからないでしょうが、詳細は種を育ててみてからのお楽しみ。果実から生まれた果物の精が教えてくれることでしょう。』
「…………わけわかんねえ」
何だこれ。マジで何だこれ!!!…とりあえずこの種を育てろってことか?どんな悪徳商法かと思ったら…。んー、でも契約書とかそういうのないし、とりあえずは安全なのか?いやいや新手の商法かもだし…うーん。 紙切れには続きがあった。
『種のお世話の仕方。 その@、まずは種を植えるための鉢と土を用意しましょう。これらはどちらもそこらへんで買ってきたものを使用しても構いません。ただ、土は肥料がたっぷりと入ったものをオススメします。』
しらねえよ。
『そのA、鉢と土が用意できましたら種を植えます。その後、お水をあげます。お水必ずは一日二回あげてください。そうしないととんでもないことが起こるかもです。あとはすくすくと種が育ち、実を結べば完了です。そうすればアナタさまのお願い事は必ず叶うでしょう。』
……うーんと、なんかすごく目茶苦茶だし、ふざけてるけど…とりあえず植えてみますか? あからさまに子供騙しだし、願いが叶うとかなんとか書いてたけど、僕は好奇心で種を植えてみることにした。
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