その後、一週間たっても芽はでなかった。 これは種が死んでしまったんじゃないかと疑うくらいだ。普通ならもうすでに果物の精がでてきてもいい頃合いなのに…。
まさかあのシルクハットの野郎、いそのちゃんと僕を騙したんじゃあるまいな。
そんなこんなで9日目。 いつものように待ち合わせ場所に行くと、いそのちゃんがいた。いつも待たせてしまって申し訳ないなあ。 いそのちゃんは僕の姿を発見するなり、ダッシュでこっちに近付き、僕の手をとっていそのちゃんの家の方向に走り出した。
「お兄ちゃん!植木鉢から芽がついにでたのです!今日の朝、植木鉢を覗いたら芽がでてました。…なんか変なタグみたいなのもついてましたけど…」
やっと芽がでたんだ! しかもタグがついてるとなれば、間違いなく果物の精であるはず。
「そのタグには何て書いてあったの?」
「…んー、よくわかりませんでしたあ。あ、でもちゃんと大切にとってありますよ!」
普通なら15分でつく距離を5分で走りきった僕たちは、急いでいそのちゃんの部屋に行く。
そして植木鉢を確認すると、確かに芽はでていた。
いそのちゃんは急いで机の引き出しを開け、中からタグを取り出し、僕に見せてくれた。
タグにはこう書かれてあった。
『あなた様にぴったりの種をご用意いたしました! ☆果物名:ひめりんご 魔力の枯渇のため、成長が大変遅れておりますが、ちゃんと成長するので見捨てないでくださいね。この種はきっと役に立つはずですから』
魔力の枯渇…?どういう意味だ? つまり…魔力が枯渇しているからこの果物の精の成長は遅れてて…。 育つのには魔力が必要ってことか。
「お兄ちゃん、何て書いてありましたあ?」
僕が持っているタグを背伸びしながらのぞき見するいそのちゃん。
「この果物はちょっと成長が遅れてるみたいなんだけど、ちゃんと成長するから大丈夫だって。あと…これは言わないほうがいいのかなあ…何の果物ができるかなんだけど…」
「聞きたい聞きたいです!」
いそのちゃんはぴょんぴょん跳びはねながら目をキラキラさせている。
「ひめりんごができるんだって。いそのちゃんにぴったりだね」
いそのちゃんは「ひめりんご…!!」と目をキラキラさせながら言い、「本当にわたしにぴったり!」と叫びながらぴょんぴょん跳びはねていた。
そんなに林檎が好きなのか。
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