果物本編 | ナノ




謎の種の正体は







芥原(くくはら)いその。
小学三年生で、茶髪のポニーテールの女の子。
"いその"という名前は『べにりんごの園』という意味からつけられていて、漢字は『"奈"の"大"の部分が"木"になっている漢字に"園"』と書くらしい。
あえて平仮名にしたそうだが、よくわからない。ケータイにその漢字がでてこないのもあるし名前には使えなかったのかも…。


僕はいそのちゃんに水のやり方を教え、お互い学校もあるので、主にいそのちゃんに面倒を見てもらって、放課後になってから僕も一緒に面倒を見ることにした。


種が育つのは早い。
キウイのときも桃くんのときも5日で生まれた。
…ということは、いそのちゃんの種もそのくらいで育つはず…。


種はまだ昨日植えたばかりだ。


今は学校の休み時間。
鶫(つぐみ)は普段から真面目に授業なんか受けていなかったが、今日はいつにも増してぐったりしている。
鶫も桃くんが心配なんだろう。きっと枚聞(ひらきき)さんも落ち込んでいるに違いない。


性悪キウイが来てから、まだ少ししかたってないけど、いなくなってしまうとどこか寂しいところがある。
いつもなら、こんな性悪キウイさっさと帰れって思うところだが。
短い時を過ごしただけでもこんな気持ちになるんだから、きっと本当に別れがきたときはもっと…。


ライチのご主人も複雑な気持ちだよな…帰したはずのその日に政権が変わって大変なことになってたら。まあ、知らないだろうけど…。


それにあのマンゴスチンって何だよ。会ったことないから何とも言えないけどさ、女王陛下は一体何を考えてるんだ?


そして特に気にかかるのが、いそのちゃんに種をあげたシルクハットの少年だ。僕の推測が正しければ、彼は果物の精のはずだ。女王の命令で回収している側から一体どうしていそのちゃんに種をあげたのか…。彼ほど謎につつまれた人物はいない。


「枝幸(えさし)くん、大丈夫?顔色悪いよ?」


声をかけられ、はっと我に帰った僕は、俯いていた顔を上げると目の前に、


「ゆ…!あ、いや、来宮(きのみや)さん!?」


杠葉(ゆずりは)ちゃんがいた。


ゆ…杠葉ちゃんに声をかけられるなんて!しかも心配してくれてる!
それでハイテンションになってたら、ここですかさずキウイが『馬鹿か、しふき』とか言って、僕を罵るんだけど…。


今はいないんだよな。


それを思い出しただけでさっきまでのテンションはがた落ち。


杠葉ちゃんはそれを見て、増々心配しているようで、


「鶫もあんなだし…二人ともどうしたの?何かあった?」


杠葉ちゃん、なんていい子なんだ。いやいやそんなことより!


「大丈夫だよ。鶫も僕もちょっと疲れてるだけだから…。心配してくれてありがとうね」


「そっかあ…ならいいんだけど…。枝幸くん、無理しないでね」


と言い残して、杠葉ちゃんはクラスの女子の輪に入っていく。
ほんとに杠葉ちゃんはいい子だと思うね。







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