果物本編 | ナノ




さんっ






「……なあ、キウイ…。あれってどうしたんだろう…」


「多分、国で何かがあったとしか…」


キウイもあまりの唐突な出来事に頭がついていってないようだ。


「じゃあ、あのチェリオっていうやつは…?」


「ああ、あれはチェリーの双子の弟でし。同じさくらんぼの精でな、チェリーと同じように国の取締役でしよ」


え、じゃあ、果物の精って同じのいっぱいいるのか。


「いや、いないでし。双子なのはさくらんぼだけだったはず…もしかしたら他にもいるかもしれんがな。あ、でも果物の精にも死はあるから、同じ果物の精として生まれ変わることはあるけど」


そうなのか。いやいや、そんなことより。


「窓どうしよう…怒られる…」


「ボクが魔法で直してやろうかでし?」


「おおっ、その手があったかあ!!」


「嘘でし。誰がそんなことするかっての。怒られればいいでし」


こんのクソ性悪キウイがああ!!!
もう我慢の限界だ!追い出してやる!


「それは助かる」


と、割れた窓からまた声がした。
チェリーかチェリオが忘れ物でも取りにきたのかと思ったが、声が違う。
恐る恐る声のしたほうを向くと、そこには両目を包帯で隠し、腹に傷のある赤毛の見たことない少女がいた。


少女は無表情のまま(とは言っても両目が見えないから何とも言えない)、


「オレは果物の王国の新しい取締役のドラゴンフルーツだ」


と言い、キウイを指差しながら、


「女王陛下の命令で、人間界にいる全ての果物の精を回収にきた。そちらの果物の精を渡してもらおう」


どういうことだ?いや、その…いきなりすぎて頭がパンクしそうなんですけど…。
話に全くついていけなかった僕よりも、何故かキウイのほうが動揺していた。


「どうした、キウイ」


と、声をかけるが、キウイは震えたまま口を開かない。
そして、しばらく立ってからキウイはやっと口を開いた。


「女王って…果物の王国の国王はドリアン王だったはずでしが?」


ドラゴンフルーツは無表情のまま、


「先程、王位が変わったのだ。ドリアン王は国王の座を辞退された。だから、その王位をマンゴスチン女王が継いだのだ。ただそれだけのこと、ルールが変わったのもそれが理由」


ああ、これのことだったのか。チェリオが言っていた件は。


「ドリアン王はそんなことするやつじゃないでし!マンゴスチンとかいうやつが無理矢理辞めさせたんじゃないのか!?」


次の瞬間、ドラゴンフルーツはキウイに持っていた剣を向け、


「口を慎め。今はマンゴスチン女王が絶対のルール。それに逆らえば死刑だ」


そしてそのまま僕を見据え、


「国に帰るぞ。おとなしく従わねば貴様の主人の首を斬る」


キウイはふるふると震えながら、僕を見て、


「しふき…短い間だったが、世話になったな」


と言って、ドラゴンフルーツとともに消えた。
最後に「願いを叶えれなくてごめんでし」と言い残して。







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