家についてもまだキウイの背中にくっついている果物の精は、いつのまにかぐーすか寝ていた。
「…こいつ、厄介でし」
と、さすが性悪キウイ、壁に後ろ歩きで近付き、背中に貼り付いている生き物を圧死させようとする。殺すのはやめてくれよ?
生き物は苦しい衝撃に絶えられなかったのだろう、キウイの背中からぱっと離れて、うううっとニ頭身の涙にしては大粒の涙を目からこぼしていた。 可哀相と同情する間もないまま、キウイは生き物を足蹴にし、
「お前は誰なんでしかっ!!」
と、口から火を噴かんばかりの勢いで言った。 しかし、生き物は涙を流すばかりで一向にしゃべらない。
「こいつ、喋れないのか?」
と、僕が言うと、キウイは
「ライチというらしいでし」
喋ったのか!!?いつ喋った!!?
「テレパシーでしよ。テレパシーは心が綺麗なやつしか聞き取れないからな、お前は心が汚いから聞き取れないでし」
心が汚くて悪かったな。
「ちなみに果物の精だけはテレパシーを受け取ることができるでし」
それは心が綺麗とか汚いとかで決まるんじゃなくて、ただ単に果物の精にしか聞き取れないんじゃないのか。 どおりでおかしいと思ったよ。性悪キウイの心が綺麗だなんて世界…いや宇宙にちかってありえないことだからな。
「んで、そのライチさんは、どうしてあそこでのびてたんだ?」
「誰かに追われていたみたいでし」
ライチの話(キウイが通訳したもの)によると、果物の精の任務を終えたライチは果物の王国に帰らないといけないのだが、人間界が好きで帰りたくないんだと。そこで王国の取締役が無理にでもライチを王国に連れて帰ろうと、ライチを追いかけているんだそうだ。で、その追っ手から逃げてる最中に木に頭をぶつけて気絶してたんだと。
「帰りたくないなら帰らなくてもいいんじゃないのか」
「駄目でしよ。人間界からしたらボクたちみたいなものは異物でしからね。異物は任務を果たしたらさっさとでていかないと」
うーん、べつにそんなことないと思うんだけどなあ。特に任務を無事に終えれたなら、ご主人も嫌々いたわけではなさそうだし…。ご主人だってライチと一緒にいたいんじゃないのかな。まあ、でも果物の王国ではタブーなんだろうなぁ。 というかそもそもライチはどうしてそんなに人間界にこだわるんだ?
「ご主人と別れたくないんだそうでし」
やっぱそうだよなぁ…。キウイなんかには早く帰ってほしいという感情しか芽生えないけど、ライチくらいならご主人もはなればなれにはなりたくないだろう。 少なくとも僕はそうだ。
「さりげなく失礼なこと言ってくれるでしね…!!」
キウイから黒いオーラがただよっている。おおふ、これはやばいぞ。
そのときだった。 僕の部屋の窓ガラスがぱりーんと割れたのは。
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