僕は泣きじゃくる枚聞さんに、
「大丈夫ですよ。本当はブラッドオレンジと暮らしたいんでしょう?まだ完璧に拒絶されたわけじゃありません。やり直すチャンスはいくらでもありますよ」
枚聞さんは怪訝そうに顔をあげて、
「でも…どうすれば…」
「大丈夫です」と言って僕は隠れていたキウイとブラッドオレンジを摘みあげた。
枚聞さんはキウイとブラッドオレンジを見て…というより、ブラッドオレンジだけを見て、さっきまで悲しさと悔しさと自分への腹立だしさで泣いていたのに一気に顔を綻ばせ、嬉し涙に変わっていた。 その様子を見たブラッドオレンジは少し顔を赤らめて恥ずかしそうに少し俯く。 途端に枚聞さんは何かに気付いたようで慌てて、
「枝幸さん!いけません!!ここで果物の精を出したら他の人にばれてしまいます!」
大丈夫ですと、僕は枚聞さんに言い、
「今、こいつらは果物の精を呼び出していない人たちには見えないようにする魔法を使っていますんで」
枚聞さんは「…魔法?」と頭上にはてなマークを浮かべている。
「はい。こいつらにはもともと魔法が使える能力があるんです。もともと主人の願いを叶えるときに使用するものなんですけど、特別に果物の精を呼び出していない人たちには見えないようにする魔法は使えるんです」
「じゃあ…」と枚聞さんは驚きつつも嬉しそうに
「わたしの家でもブラッドオレンジを育てることができるんですね!」
と言った。 そこでキウイがでしゃばって、
「ブラッドオレンジの野郎、魔法使えてたくせにドジで使うのを忘れてたんだそうでし」
枚聞さんは今キウイの存在に気付いたようだ。
「この子は…?」
「僕の果物の精のk「キウイ様でし」」
「下僕がお世話になったな」
誰が下僕だ。前から言ってるけど僕はお前なんかの下僕になった覚えはないぞ。
「枚聞瑠璃とやら、ブラッドオレンジは相当なドジっ子でし。だからこれから魔法使うの忘れてたりとか色々アホでマヌケなことを繰り返すかもでし。そんなやつでしが、拒絶せずに受け入れてやれるでしか?」
枚聞さんはキウイの言葉を聞いて、笑顔でこくりと頷き、
「はい!ちゃんとお世話します」
と答えた。
「…瑠璃、ごめんなさい。あたくし様、瑠璃の気持ち知らなくて…。勝手に被害妄想したりとかしてごめんなさい」
ブラッドオレンジは泣きながら枚聞さんに言う。 そんなブラッドオレンジに枚聞さんは、
「大丈夫だよ。あなたのこと考えているつもりで全然考えてあげれてなかった…。わたしこそごめんなさい!こんなわたしだけど…これから一緒に暮らしてくれる?」
「もちろんよ!」
こうしてブラッドオレンジは枚聞さんのところに戻ることとなり、一件落着したのであった。
ブラッドオレンジと枚聞さんの姿を見ていると、理想の果物の精とご主人様象だな。僕とキウイじゃその一欠けらもないけど。
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