果物本編 | ナノ




ななっ






さて雑談はこのくらいにして、僕は本題に入ることにした。ほんとはまだ雑談していたかったけれど、さすがにこのくらいにしておかないと何しにきたで終わってしまうし。


「で、本題なんですが…」


僕は一瞬戸惑った。いきなりあの話を切り出してもよいのか、何か前置きが必要かとか…。しかし僕は前置きをしてぐだぐだした話になるよりは、ここはストレートにいってさっぱり終わったほうがいいと思った。


「いきなりであれなんですけど…」


心臓がばくばくいっている。果物の精ごときでこんな風になるのもどうかと思うけど…。


「果物の精って知ってますよね?」


それを聞いた枚聞さんは目をぱちくりさせている。
ああああ、言っちゃったよおお!!!!


枚聞さんは少し困惑した顔で、少し俯くが僕の目だけはしっかりと見て、


「…はい。知ってます」


と答えた。


「あのう…それがどうかしましたか?」


枚聞さんの表情は一気に青ざめた。


「いや、それがですね…」


僕はブラッドオレンジのことを枚聞さんに話した。枚聞さんの性格からして拒絶するようなことはなさそうなんだけど…。


「……そうだったんですか」


枚聞さんは僕の話を聞き終えると落胆し、俯く。


「あの子には酷いことをしたと思います。でも拒絶はあの子のためだったんです。拒絶しないと…あのままだったらあの子が果物の王国に帰れなくなるから…」


目から大粒の涙をこぼしながら、


「わたしの家にはたくさんのお客様が来ます。ブラッドオレンジがわたし以外…果物の精を呼び出した人以外の人には見えないのなら問題はなかったんです」


枚聞さんがブラッドオレンジを拒絶した理由が見えてきた。


「見つかってしまったんです。ブラッドオレンジが。そのときはよかったんです。わたしのお母さんが見つけて、すぐ失神してしまったから、あとで何とでも言えるもの…。でも、今度見つかったら大変なことになるかもって…。お母さんは見たことない生き物や物をすぐにでも売ろうとする人なの。お客様も親族もそういう人ばかりだから、ブラッドオレンジを救うためには拒絶しかなくて…。拒絶のことは前から知ってたわ。ブラッドオレンジが前に教えてくれてたし…」


理由はわかったよ、枚聞さん。その理由は最もだと思うけど…。


「でも拒絶してしまえばブラッドオレンジは新しいご主人を探さなきゃいけないんです。それがどれだけ大変なことか、知ってたんですか?」


枚聞さんはこくりと頷き、


「わたしは…わたしはあの子に本当にひどいことをしてしまいました。わたしにあの子を育てる資格はありません」


枚聞さんは泣きながら、


「でも、これだけはわかってください。わたしは出来ればあの子と一緒に暮らしたかった。だけどあの子を守るためにはこれしかなかったんです」


拒絶の大変さをわかっていて、それを行ったのだから、彼女の決心はかたかったのだろう。
ブラッドオレンジのことを思ってのことだったのだ。







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