果物本編 | ナノ




よんっ






ブラッドオレンジのご主人様の名前は<枚聞・瑠璃>(ひらきき・るり)というらしい。とても清楚な女の子だそうだ。


「瑠璃はとても優しい子よ。あたくし様が種のときにたくさん優しくしてくれた。毎日お水をくれたのだもの」


ブラッドオレンジは少し目を潤ませて言う。


「でも、あたくし様が生まれてから少ししたら優しかった瑠璃はどこかに行ってしまったわ。拒絶の日々よ。お話をしようとしてもきいてくれないの。だけどあたくし様は瑠璃を嫌いになったりしないわ」


こいつらにとって人間ってどういうものなんだろうな。拒絶されてもその人間を大切に思っているなんて…。


そんなこんなでブラッドオレンジに案内されるまま枚聞瑠璃の家に行く途中。キウイがいきなり「ぎゃぼっ!」と声をあげた。


僕が「なんだ?」と問えば、キウイは「あ…あああれあれ!!!」と全身をがくがく震わせながら前方を指差す。指を差している方向を見遣るとそこには大きくて不細工な猫が電柱の横に君臨していた。


「なんだ、何かと思えば猫じゃないか」


「ふぎょおお!!!しふき、どうにかするでし!!!!!!あれは地球外生命物体でしー!!!!!!!!」


猫は地球内生命物体だ。
むしろお前ら果物の精のほうがよっぽど地球外生命物体に近い。


てか、キウイは猫が苦手なのか…?


「でしでしでしでしぃー!!!!!!!キウイフルーツはマタタビの仲間で、苗が幼いときによく猫被害にあうでしよう!!!ぎゃあああああ、あのときの恐怖があ蘇るうー!!!!」


ああ!だからあのタグにも『猫被害にはお気をつけください』みたいなかんじで書いてあったのか。なるほど〜。つまり、キウイフルーツはマタタビの仲間だからマタタビ大好きな猫たちに襲われるのね。


てかあのときってお前…僕は猫に相当気を使ってたからお前は猫被害にはあってないはずだが…。


「先祖代々受け継がれる恐怖でしよ。お前にはわかるまい」


そりゃあ、わかんねえよ。
とりあえず僕はキウイがびくびくしてるなか猫の横を通りすぎる。猫は僕たちのことを気にもとめずのんびりごろりんしている。







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