果物本編 | ナノ




さんっ





あーだこーだ言ってるうちにいつの間にか時計は午後6時を指していた。鶫が晩飯をご馳走してくれると言うので、僕は家に連絡を入れ、せっかくなのでご馳走になることにした。


鶫の両親はどちらも遅くまで仕事らしく、いつも鶫がご飯をつくっているらしい。鶫には兄弟もいないから遅くまで一人みたいだ。


僕にも何か手伝えることはないかときくと、芙希はこういうの苦手そうだからいいと言われてしまった。まあ、確かに苦手だよ…ていうか、やったこと自体ないし。僕の家では母親が料理やってるからなあ。というわけで僕はダイニングの椅子に座っておとなしく待つことに。


「芙希さあ…その…果物の精?とか言うやつのこと知ってんだろ?俺、全然わかんないからよかったら教えてほしいんだけど…」


鶫は何故かちょっと顔を赤らめている。そんなに恥ずかしがることか?


「恥ずかしがってなんかない!いいから早く教えろ!」


僕は鶫に僕の知っているかぎりの果物の精の情報を教えた。果物の王国の国王がどーのこーのとか、色々。そんなこんなしているうちに晩飯ができたらしい。


「簡単なもので悪いけど…」


今日はカレーらしい。僕、カレー大好きなんだよね。どうやらキウイたちの分もあるらしく、小さな皿に盛られている。
僕はいただきますをして、一口頬張る。ふおおっ!!鶫って料理上手だったんだな!僕の家のカレーの何倍も美味い。
ふと鶫のほうに目をやるといつもと様子が違った。いつもなら食欲旺盛でばくばく食べるくせに、今日はちびちびと食べている。


僕が、


「どうした?」


と声をかけると、鶫は少し俯き、恐る恐る口を開いた。


「……味……まずくないか?」


ああ、なんだそんなことか。美味いよ。美味い美味い!美味すぎる。少なくとも我が家のカレーよりは美味しい。


そう言ってやると、鶫は「よかったあ」と安堵の顔をしながら言い、いつもの食欲旺盛な鶫に戻っていた。


ずばり単純でわかりやすいやつである。


そんな鶫をよそにキウイはカレーの中に入ってる具をじいっと見つめながら停止していた。


「おい、キウイどうした?」


そう僕がきくと、キウイはふるふる震えながら、


「人参……ダメでし!!!!!」


とおっしゃった。


おい、せっかく鶫がつくってくれたというのに何様だ貴様。好き嫌いはしちゃいけないんだぞ!そんなんじゃいつまでも大きくなれませんよ!!


すると先程まで黙々と食事をしていた桃くんがキウイのほうに向き、


「オレは今ものすごく空腹なんだ!貴様、食べないならオレが全部もらうぞ!」


と言って、キウイの皿を奪い、猛スピードで食している。キウイは「でしいぃいいいぃいいぃいいいぃい!!!!」と悲鳴をあげている。自業自得だ。そして桃くんは空になった皿をキウイの前に置き………皿は空ではなく、人参だけ綺麗に食べられていた。人参以外の具とルーとごはんはまんま残されている。


桃くんはふんっと鼻をならして、また自分の食事につく。どうやら桃くんは根本的には優しい子のようだ。








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