果物本編 | ナノ




にぃ





「ほら、これこれ!!」


放課後。僕は鶫の家に行った。もちろんキウイも一緒である。


「あれ?もう実ができてる」


「あー…多分そろそろびっくりすることが起こると思うよ」


「え?芙希、これ知ってるのか?」


鶫は「すげえ!」と言いつつもちょっとふて腐れてる。僕がこれを知っていたことがそんなに気に入らなかったか。鶫ってほんとにわかりやすいよなあ。


「で、これは何の果物なんだ?」


見たところ、桃っぽい。


「さあ?」


「…おい!!芽にタグついてただろ!」


「………そんなのあったっけ?」


結構無神経なんだよな、こいつ。やることほとんど雑だし、おおざっぱだし面倒くさがりやだし…。
………ん?だとしたらもしかして…


「水、一日に二回あげてる?」


「………水…はっ!!やばい、あげてない…」


………ええぇええええぇえええええええええっ!!!!!!!!????


「必ず水あげろって書いてあったろ、紙切れに!!」


「は?そんなのあったっけ?」


駄目だ、こいつ!!


「てか、この種手紙で送られてきたんじゃないのか!?」


「……いや、そこらへんで拾った」


………………………………………。
あー、もうやってらんねえ。とりあえず水をあげなければとんでもないことが起こると紙切れに書いてあったので、怖いです。一体何が起こるというのか…。


「お。芙希、見ろよ!実が光ってるぜ」


ええええええええええ!!!?もう光っちゃってんの!!?ぎゃあああああ、とんでもないことが起きちまうよ!!


キウイのときと同じように実は光り出し、かぱっと割れ、中から精がでてきた。


「……なんだこれ」


鶫は小首を傾げている。…うん、まあそれはわかるけどさー、驚くとか何かリアクションないわけ?


「…………オレを呼び出したのは誰だ?」


「ええと、こいつです」


とんでもないことが起こるっていうからびくびくしてたもののそれらしいことが起こるかんじはしない。水あげなかったくらいじゃ何も起こらないのか。ほっとした反面、ちょっと面白くないと思ったり。


「で、君は何の果物の精なの?」


「桃」


あー、やっぱりか。果実が桃っぽいと思ったんだよなあ。


「ていうか、芙希さー。なんでこれのこと知ってんの?」


お前は少しくらい驚いたらどうだ。見たこともない生物を目の当たりにしてるんだぞ。


「ああ、実は僕も育てたことあって…ほら、これ!」


そう言って僕はキウイのほうを指差す。


「これとはなんでしか、しふき」


これと言われたのが相当気に食わなかったのか、ものすごく不機嫌に返された。


「えええええ!!!?お前、そんなの飼ってたのか!」


驚くところが少し違うと思うよ、鶫。


「飼われてなんかないでし!しふきはボクの下僕でし!」


それもちげえよ。


「…ていうか、キウイ。水をあげなかったらとんでもないことが起こるって紙切れに書いてあったけど、何か起きてるのか?」


とても何か起きてるかんじはしない。


「……水をあげなかったらな、……性格が捻くれるでし」


……………………は?
ワンモアプリーズ?


「だーかーらー、性格が捻くれるでし」


ええええええええええええええええええええ!!!!!!!?それだけ!?


「それだけでし」


いやいやいやいや!!ていうか、僕は真面目に一日二回ずつ水をやったっていうのに何でこんな性悪キウイが生まれてんだよ!


「…それは…ボクの性格がもともとこういうのだからでし」


もともと性格が悪いのかよ!!もしかしたら水をやらなかったらもっと性悪になってたんじゃ…。


「いや、むしろ性格よくなってたでしよ。可憐な乙女系だったはずでし」


可憐な乙女とかキウイには似合わないと思う。


「おい!」


うわあ、目茶苦茶機嫌悪そう…。てかそれなら水やらないほうがよかった。…ん?


「ていうか、キウイ!お前自分で性格悪いってわかってんじゃん!」


「はあ?いつボクが自分のことを性格悪いって言ったでしか!さっきのは今でも目茶苦茶性格いいのが水をやらないことによってもっと性格がよくなると言ってるでし!それに悪いが、ボクのなかでの性格悪いの定義は可愛子ぶってるやつや親切なやつとかのことを言うでしよ。ボクみたいな性格は究極に可憐で麗しいでし!」


ああ、つまりはキウイにとっての性格がいい=僕にとっての性格が悪いということですね?じゃあ、やっぱ水あげといて正解だったんだ。よかったあ、これ以上性格悪くならなくて。


「で、桃くんは性格捻くれちゃってるの?」


「…………直接きいてどうするでし」


確かに。


「まあ、こいつはもともとあまり喋らないタイプだし…」


何でお前が今日初めて会ったこいつのことを知ってるんだ。


「勘ってやつ?」


もういい。


「とりあえずさー」


鶫はだるそうに口を開いて、


「俺、お腹すいたから何か食べていい?よかったら芙希も一緒に食うか?」


と言った。








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