こうして僕は一日二回ずつ毎日水をやった。とんでもないことが起こってもらっても困るしな。 キウイはすくすくと育ち、五日くらいしたらもう実ができていた。
「ほんと成長早いな、これ…」
実は紛れも無く普通のキウイのもの。ていうか、キウイってこんな育て方じゃないだろ。雌雄両株が必要でそれを育てて初めてキウイができるんだろ?ほんとにこれはキウイなのか…? 僕がぶつくさ考えてるうちにキウイの実はうごうごしながらどんどん膨張していった。
晩飯を食べ終えて部屋に戻ると、目の前には実が光りだしているキウイが。
「なっ…!?なななっ!!なんだこれ!!」
キウイはどんどん膨張し、ついにはち切れてかぱっと中から実が……じゃなくて、人?が現れた。 人っつっても二頭身のような妖精みたいなやつで……む?妖精?そういえば手紙に入っていたあの紙切れにそういうのが書いてあったな…こいつがあの紙切れの言う『果物の精』なのか…?
「おい、貴様がボクを呼び出した人間でしか?」
うおおおっ、しゃべった!!
「何を驚いてるでしか。まあ、いいでし。ボクはキウイフルーツの精でし。お前の願い、叶えてやるでし!」
「…は?願い叶えるって…」
「お前の願いを叶えてやると言ってるでし!………それより、お前の名前を先に教えんかっ!!」
「ああ…僕の名前は枝幸芙希…」
「む?餌・しふき?」
「違う!餌じゃなくて枝幸!」
「まあ、いいでし。しふき、今日からお前はボクの下僕でし!」
「いやいや、全然よくないし!しかも下僕ってなんだ!?」
「全く…騒がしいやつでし」
「ていうか、お前一体なんなんだよ!」
「芙希ーっ…うるさいわy…!!!!?」
「げっ!!ねーちゃん!!?」
「なっ…!!?なななっ!!!?何これ!!?」
「何これとは無礼な!ボクはキウイでし!餌しふきに呼び出された果物の精でし!」
「果物の精…?」
「ああ、そういえば説明がまだだったでし。とくにしふき、耳の穴かっぽじってよく聞けよ」
そう言ってキウイフルーツの精は話を始めた。
今僕がいる人間界という世界の他に『果物の王国』というものがあるらしい。キウイはそこから来たんだそうだ。とは言ってもこっちの世界で生まれたのだから、向こうの世界に関しては生まれる前から組み込まれていたデータくらいしか知らないという。
「果物の王様が人間好きでな、それでこの企画が始まったんだそうな」
この企画とは人間界に果物王国のやつらを送り込み、人間に育ててもらい、感性を育むためのものらしい。人間界で学ばせ、素晴らしい国民を生み出したいようだ。国王何考えてんだかよくわかんないけど、人間界で学んでも何もいいことないぞ。素晴らしい国民を生み出すどころか悲しい国民を生み出してしまうぞ。
「それでそのお礼にお前の願いを叶えてやるってことでし!ボクを素晴らしい国民に育てあげるでしよ」
そう、そのかぐや姫法に乗っ取って果物の精を育てあげ、国に帰すと願いを叶えてくれるらしい。
「ていうか、お前なんか臭いぞ…!」
「ああ、これはキウイの匂いでし。んんー♪いい香り♪」
「どこがだ!!僕はキウイが大嫌いなんだよ!」
「アレルギーでしか!」
「違う!!アレルギーじゃないけど嫌いなの!」
「………ほう」
あれ?なんかキウイから黒いオーラがでてるんですけど…。
「…キウイさん?」
「ボクのルールではキウイが嫌いなやつは征伐しなくてはならないでし。覚悟しろ、しふき!!」
「なっ!!なななっ!!」
「くらえ!!皮ごとキウイー!!!!」
「ぎゃああああああああ!!!!!」
キウイは僕の口いっぱいに皮ごとキウイを詰め込んだ。 うげえっ、死ぬ…。
「ねー、キウイちゃん。こいつデリカシーないでしょー?キウイっていい匂いなのにねえ」
「でしでし」
「あたしはキウイ大好きよー」
「照れるでし////」
あとでわかったこと。 どうやらキウイはキウイ大好きだという人とキウイアレルギーの人には優しいらしく、キウイ大嫌いという人に対しては厳しいらしい。 ああ、僕はなんてことを…。その設定を早く知っていればアレルギーと言って一件落着だったのに。 そんなこんなで僕は性悪キウイと暮らしていくことになり、先が思いやられるのであった。
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