戻らない時間の中で 6



「リンが”再臨”の成功者?!」
 公園に着いて、オリヴェートの第一声がそれだった。人気の全くない場所とは言え、さすがにそんな大声を出されては困る。
「あのな、俺は大声出すなって言ったぞ?」
「だ、だって…」
 物言いたげにリンを見てくるオリヴェートに、彼は諦めたように盛大なため息をついた。
 仕方がない、といえばそうだろう。
 ”再臨”の存在自体曖昧で、ましてや、神が成功させたという儀式を人間がやってしまったことは誰でも驚く。自分が逆の立場なら、同じ反応をしていたかもしれない。
「確かに、俺は死んだ。けど、リンの“再臨”によって蘇った。それが、真実だよ」
「じゃあ、 “再臨”はあるんじゃない!」
「ねェよ」
 ライトの言葉に喜ぶオリヴェートだが、リンに言われ、一気に落胆する。不満げな顔をする彼女に、リンはまたため息をついた。
「まぁ、信じるかどうかは勝手だけど」
「事実は事実さ。もう”再臨”の書は存在しない。二度と、こんなことが起きないように、リンの中に、俺が封じたからな」
「な…ッ!」
 突拍子もないライトの言葉に、オリヴェートは言葉を詰まらせる。だが、それを首肯して、リンは自分の手を見つめた。
「ライトのことしか考えられなくて、どうしても”再臨”を成功させたかった。実際、ライトはこうして生き返ったけど、そのせいで、夜にしか出歩くことのできない、中途半端な体になっちまったんだ」
「それに”再臨”をむやみに使おうとすれば、君のように”狂気”に呑まれて、悪魔を呼ぶ。リンは、その悪魔を自分の内に封印することを枷として”再臨”を使えたけど、普通なら悪魔に食い潰されてるところだ」
「だから、封印した」
 最後を締めくくったリンの言葉に、オリヴェートはただ呆然とするばかりだ。だが、それを嘘だと否定するには実体験をしてしまったし、何も言葉が出てこないようだった。
「お〜い、大丈夫か? オリヴェ」
 見かねたリンが声をかけると、ぱっと顔を上げて、彼女は、改めてライトを見た。
「復活させた弟を恨んだりしなかったの?」
 それは、昼の公園で、リンに言った言葉と似たようなものだった。その真意を知っているだけに、リンは苦々しい表情を浮かべている。だが、それに気付いたライトが、自分の肩をぽんと叩いてくれたことで、ふっとリンの緊張が和らいだ。
「まぁ、その時は、ね?」
 苦笑するライトに、頷いてみせるリン。
「世界の理をねじ曲げるな、って、怒られた。けど、その後、無茶したことで、ライトに心配をかけたってわかったからな」
「それで『最強』か…」
「まぁね」
 同時に言って笑ってみせる二人に、オリヴェートもようやく納得したようだった。昼間見せたような、何かを抱え込んでいるような表情とは違うと、はっきりわかる。
「ほんとに凄いのね、貴方達」
「そりゃあ、イシス最強だからな、俺達は」
 堂々と宣言して、気持ちの良いくらいの笑顔を見せるエヴァーライト兄弟に、オリヴェートも笑ってみせる。
 そうして、悪夢の夜は終わった。






〔2012.10.21 Song by CONNECT 『あの雲を追って』〕

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