リリカ様からのリクエスト | ナノ

... This story is to be continued.


「ねぇ、シン……トーマ誘って行っておいでよ」
「いいからおまえはもっと食えよ、おかゆ全然減ってねーじゃん」
「だってせっかくチケット取れたのに、ずっと楽しみにしてたのに……」

こんなに人気が出る前から、二人でずっと好きだったバンドのライブ当日。
サイドボードに二枚重ねてあるライブチケットは、シンが必死に取ってくれたものだった。

(どうしてこんな大事な日に熱なんて……)

自分の情けなさに呆れる。

「ったく……遠足当日に熱出す小学生かよ、おまえは」

困ったみたいに笑って私の頭をくしゃくしゃ撫で回すシン。
小学生じゃないもん、なんて唇を尖らせながらも、申し訳なくて泣きそうになる。

「シン……ごめんね……」
「こんなことで泣くなっつーの、ったく子供かよ」

口が悪くて可愛げの無い弟。
そんな軽口をたたきながらも、私を撫でる手は温かくて優しい。

「……チケットくらい、また取ってやるから。だから泣くな」

少しだけ赤くした顔を背け、小さな声でそう呟いたシン。
彼の不器用な気持ちがただ嬉しくて。

「ありがとう……」

そう告げた私に彼は、

「……ばーか」

って、笑った。


ねえ。
私ね、シンに「ばか」って言われるのは嫌いじゃなかったよ。

そりゃ時々本気で馬鹿にされてるな、なんてむっとすることもあるけど。
でも大抵は優しい響きを持って、柔らかい目で私を見つめて。

だからシンの「ばか」はいつも嬉しかったんだ。

ねえ。
馬鹿みたいでしょ?



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