その他blog妄想まとめ | ナノ

2013.2.22妄想【十三支 曹操×関羽】


「曹操様、関羽様からの御言伝を預かって参りました」
「言伝、だと……?」
「体調が優れないので暫らくの間お顔見せができないとのことです。万が一曹操様にうつってしまっては申し訳無いので見舞いなども必要ない、と」

女官から聞かされた内容に、書き途中の書簡もそのままで部屋を出た。
ここ数日というもの、忙しさからかまともに顔を見ていないとは思っていたが、まさか体を壊していたとは。
猫族ということもあって身体の強い関羽が床に伏せるなど酷く珍しい。
だからこそ心配でならなかった。

廊下を進んだ先に見えた関羽の部屋。
その前に立っている女官二人に疑問を覚える。
普段部屋に見張りなどつけないあいつが一体どういう風の吹き回しだろうか。

「関羽は部屋にいるのか?」
「そ、曹操様……関羽様は御身体が優れない為もう眠っておいでです。どうかお部屋にお戻られください」
「先の妻を看て何が悪い、そこを通せ」
「申し訳ありません、関羽様から誰も部屋には通さないよう言われておりますので」
「……何だと?」

意味の分からない理由を述べる女官にも、ぴたりと閉ざされた扉にもただ苛立って仕方ない。
否、これは焦燥。
我ながら関羽のこととなると途端に己を保つことが難しくなる。

「関羽、関羽……、そこにいるのだろう?少しだけでも顔が見たいのだが……」

室内に向かって問いかければ、僅かな間の後控え目に私の名を呼んだ柔らかな声。
久方ぶりに聞いたその声に安堵する。

「曹操、ごめんなさい……今はちょっと具合が良くないの。出直してもらってもいい?」
「体調が優れないと聞いたが、風邪でもひいたのか?」
「ええと、そうなの。喉が痛くて…ごほっごほ!曹操にうつってしまったら大変だから、治るまでは部屋で大人しく寝ているわね」
「…………」

こんなわざとらしい演技に納得させられるのは、あの喧しい関羽の弟分くらいなものだろう。

「……入るぞ」
「っ、なんでよ!?私の話聞いてたの?ダメだって言ってるでしょ!」
「お前の茶番に付き合っている暇は無いのでな」

扉へと伸ばした手は、身を割り込ませるようにした女官に阻まれる。
何故そこまでして私と会うことを拒むのか理解できなかった。

「……関羽…」

零れ落ちた言葉は自分でも狼狽える程弱く震える。

「関羽……、頼む。お前の顔が見たいのだ……」
「曹操……」
「関羽……」
「っ…ずるいわ、そんなふうに呼ばれたら断れないじゃない……」

扉の向こうから聞こえる声が甘い響きに変わった。
それを承諾だと捉えた女官は、戸惑いながらもその身を退かす。
会うことを渋られた理由も分からずに指先が躊躇ったが、一つ息を吐いて扉を開けた。

寝台の隅に小さく座る関羽を見て、次の瞬間鼻を過った香り。
眩暈を覚えるその甘い香りに頭の芯が痺れた。

「――っ、これ…は……?」
「あ、あんまり近くに来ないで……!」

更に隅へと下がる関羽の姿がゆらりとぼやける。
まるで磁力でも働いているかの様に引き付けられ、寝台へ着いた手がギシリと軋む音を立てた。

はぁ、と勝手に上がった息は熱く溶ける。
目の前にある漆黒の瞳は、それよりも熱い。
俯こうとする顔を上げさせようと頬に指を沿わせると、細い肩が小さく跳ねた。

「んっ…さ、わらないで……」
「関…羽……」
「ダメなの…今は、この時期はダメなの……」

首を振って私を押し退けようとする腕は、拒む言葉とは逆に弱々しい。
触れる場所は全て火傷しそうに熱く火照り、留まることなく広がっていく。

朱に染まる目元。
期待に震える唇。
抗おうとすることすら忘れさせる匂い。

(これは……)

「関羽…お前、発情しているのか?」
「……っ!」

観念したようにきつく閉じられた瞼は、欠片だけ残していた理性を簡単に奪った。

交わすというより咬みつくといった表現の方が正しい口付け。
絡み合う舌はもうとっくに蕩けきっていた。
部屋中に漂う雌の匂いにあてられて抑制が効かない。

「ふっ…んぅ……曹、操……」
「は、ぁ…関羽……!」

普段ならば口付けすら恥らって臆する関羽が自ら小さな舌を伸ばしてくる。
求められる感覚に頭は白く染まっていくばかりだった。

何故黙っていたのかと睦み合う最中に尋ねても、関羽は透ける肌を汗に濡らして高く鳴くだけ。
こうして出逢う前まではどうやってこの時期を過ごしてきたのか。
関羽を抱いた男は自分だけだと理解しているものの、この甘い匂いを知る輩がいるかも知れない。
それを思うと昂った胸中の奥が僅かに燻った。

「あっ…曹操…んっ、曹操……」
「関羽……っ……」

本能の行動であっても、呼び合う名は愛しさを孕む。

妖艶に揺れる姿は、どこか戦場で舞うそれと重なった。
ただ美しく咲く身体。

今夜は限りなく新月に近く、闇は長く二人を包む。




prev / next
[ back to その他blog妄想top ]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -