その他blog妄想まとめ | ナノ

2013.2.16妄想【ワンド アルルル】


す、とテーブルの上に出された小さな箱。
白地にピンクのリボンが可愛いくも若干憎たらしいと思うのは、たぶん雰囲気がルルに似てるからだろう。

「はい、どうぞ」

にっこりと人好きのする笑顔を向ける彼女に、ありがとう、と俺も笑みを返した。
読んでいた新聞に再び目を落とすと、今度はずいっと箱が間近まで差し出される。

「……何かな、ルルちゃん?」
「開けて、アルバロ」
「…………今?」
「今!」

キラキラした瞳を期待に輝かせてテーブルに身を乗り出して。
まぁこういう無邪気なところが彼女の魅力とはいえ、思わず苦笑いが零れてしまう。

「これ、チョコだよね?」
「そうよ、だってバレンタインだもの」
「ルルちゃんも知ってると思うけど、俺甘いものはちょっと苦手なんだけど」
「すっごーく甘さ控えめにしたし、見た目もとっても可愛くできたんだから一口だけでも食べてよ!」

そう言ってまた箱を近づけるルルの顎に軽く手を添えれば、今度は大きな瞳をパチパチと瞬かせた。

「俺はチョコよりもルルちゃんの方が食べたいな」
「っ……!」

薄桃色に染めた唇の表面をなぞるように囁いて、柔らかなそれを深く奪う。
恋人との口付けは甘いものだなんて誰が言ったのか。
そんなの心底馬鹿馬鹿しいと思っていたのに、実際その通りなのだから厄介だ。

「んっ……ふ…」
「……チョコ味見した?舌、甘い」
「ふ、あ…アルバ……んぅ……」

鼻から抜ける声すら酷く甘くて胸やけを起こしそうになる。
長いキスの後、可愛い恋人はじろりと俺を睨みつけて。

「もぅ……すぐそうやってスケベなオジサンみたいなこと言うんだから……」

なんて、蕩けそうな顔して暴言を吐いてくれるあたり本当に彼女らしい。

「オジサンってあのね…俺まだピチピチの20代なんだけど?」
「いいからちゃんとチョコ食べてほしいの!」
「……はいはい」

普段ならここまでしつこくキスをすれば、そのままベッドまで簡単に流されてしまうルルなのに。
よっぽどのことなのだろう。
まぁ先月始めから部屋中にカカオの香りを漂わせていたくらいだ、今年のバレンタインは相当気合い入れてるとは思ってたけど。

ルルちゃんを煽るつもりが、俄かに熱くなった身体に溜息をついて箱を引き寄せる。
ラッピングを解いている途中で、ふと止めた手。

「……まさかとは思うけど、ルルちゃんこのチョコに変な魔法かけてないよね?」

肘をついてニコニコ俺を眺めていた彼女が、俺の言葉にこげ茶の瞳を瞠目させる。
次の瞬間、それはふわりと色を変えて。

「さぁ?」

と腹が立つ程妖艶に笑って見せた。

(こいつ……)

純情で可愛いあの子はどこへ行ってしまったのか。
もちろん純真なところは昔のままだが、日に日に食えない女になっていくようで。
しかしそれもまた面白いと感じる自分がいるのだから我ながら呆れる。

結局ルルに振り回される毎日。

(さーて、今度はどんな面白いことが起こっちゃうのかねぇ)

頭の中に苦笑を浮かべて、艶々に丸いチョコレートをひとつ頬張った。



prev / next
[ back to その他blog妄想top ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -