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2012.6.4妄想【ワンドU ユリルルあのシーン】


どれだけ唇を深く重ねても足りなくて、足りなくて。
もっと近くで。もっと深い場所まで。
そう心が命ずるがままに、柔らかく濡れたルルの口内に舌を泳がせた。

なんて温かいんだろう。
彼女の体温は冷え切った俺の全てを包み込んで溶かす様で。
ルルの頬を伝う涙を追うみたいに俺の涙が混じり合っていった。

「ルル…、ルルっ……。」
「…は、ぁ…ユリウ…ス……。」

繰り返し彼女の名前を呼べば、それに応えて彼女も俺を呼ぶ。
幾度も交わしたキスで赤く染まった唇が『ユリウス』と言葉を紡ぐ度、その優しい響きにまた涙が溢れた。

何だかもう堪らなくなって、ルルの奥深くまで自分の熱を突き入れる。
ろくに準備もしないまま繋がったその場所は驚くくらい狭くて、でもそれが彼女をより近く感じられて嬉しくて。
腰を揺らす俺を離すまいと絡み付く君の内側は、意味が分からない程に気持ちよくて。

痛みに顔を歪めたルルを気遣う余裕も無い俺に、彼女は酷く慈悲深い笑みを見せる。

いいんだよ、大丈夫。
濡れた淡い茶色の瞳はそう俺に伝えてくれるから、俺はただ夢中になって君の中に潜った。

ただお互い傷を慰め合っているだけなのかもしれない。
こうして抱き合うことで悲しさや辛さから逃げているだけなのかもしれない。

けれど今だけは、今この瞬間だけは何も考えずに君を想っていたかった。
君が与えてくれる温もりの中に浸っていたかった。

子猫みたいな声で鳴いて、細い腕で俺の背中を力いっぱい抱き締めて。
俺を真っ直ぐ見つめるルルに、止めどなく込み上げるこの感情は何だろう。
心の底から湧き出るこの感情を、何と呼べばいいのだろう。

そんなこと、考えるまでも無かった。
たぶんずっと前から知っていた。

「あっ、…ユリウス…、だい…じょうぶ、だから……もっと……。」
「―――っ…。」

きっと男の俺には想像もつかないくらい辛いはずなのに、ルルは俺を丸ごと受け入れて許してくれる。

ここで言うべきじゃないと思った。
今言ってしまったらいけない気がした。

「っ…ルルっ!……ルル!」

だから俺はただ君の名前を呼び続ける。
そうすることで俺の気持ちが少しでも君に伝わるようにと。

「んっ…あぁっ…っ、っ!」
「…ふ…っく……!」

ルルの中にどうしようもない熱も想いも全てを注ぎ込んで、汗に濡れた身体を掻き抱く。
また俺の頬を涙が伝ったけれど、落ちるように薄れていく意識の中、これはさっき流した涙とは意味が違うものだと感じていた。


いつか伝えるよ、君に。
その時が来たら。

生まれて初めて知った意味が分からないくらいに強い感情。
焦がれるようなこの想いを…。




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