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2012.9.8妄想【シン主 主がすぐやだって言う理由】


「こういうキス…やだ……」

「っ、その触り方やだ……」

「…ぁっ…そんなところ、舐めちゃや、だ……!」

俺のシャツを握りしめて震える姿に、思わず重たい溜め息を吐いた。

「お前さ、さっきからやだしか言ってないんだけど…そんなにオレに触られんの嫌なわけ?」
「……っ」

冷たい言い方になってしまった自覚はあるが、無理もないと思う。
もともと人一倍恥ずかしがるタイプだとはいえ、仮にも1年以上付き合っている恋人に毎回触られることを嫌がられたらオレだって傷つく。

キスする度に体固くされて。
抱き締める度に涙目になられて。

別に無理させようってわけじゃないけど、そろそろオレに慣れてほしいのに。

「シン……」

ほら、またそんな怯えたみたいな目で見る。
切ないを通り越して腹が立ってしまうオレは、こんな時どうしてもお前に優しくできない。

「……そんな顔すんな。お前が嫌ならもうしないから安心しろよ」

何でいつまでもそんなんなわけ?そう問い詰めたくなる気持ちを抑えて小さな体を離した。
頭を冷やそうと部屋から出ようとして、ドアノブに手をかける寸前にドン、と背中に感じた衝撃。
力いっぱい抱き締められて、一瞬何が起こったのか分からなかった。

「な…どうし――…」
「恥ずかしいんだもん……!」

肩甲骨に響く大きな声。
こいつがこんなに感情的になることなんて珍しくて、瞠目した。

「キ、キスとか、変な顔してたらどうしようとか…何か、こ…声とか!シンのせいでおかしくなっちゃうのが恥ずかしいの!シンが悪いの!!」

オレの腰にしがみ付いた腕にぎゅっと力が籠る。
まくしたてるようにそう言ってから、もう一度消えそうな声で「シンが悪いんだもん」と呟いた。

こいつは、こういうことを無自覚でするから困る。

「……なぁ、顔見せて」
「……やだ」
「またそれかよ……ったく」

腰に回された腕をやんわりと解いて向き合えば、真っ赤な顔をして俯く恋人。
これでオレより年上なんだもんな、と頭の中で苦笑した。

「オレが悪かったんだ?」

上がってしまう口角もそのままに問えば、うっ、と言葉を詰まらせる。
なんだかんだ結局こいつには適わないようにできているんだ、なんて嫌と言う程自覚した。

「……ドキドキしすぎて苦しいから嫌なの」
「ドキドキするのは悪いことじゃないだろ?」
「だって息できないもん、嫌だよ!」
「じゃあ謝るから、オレが悪かったからこっち見てよ」
「じゃあって――…」

唇を尖らせてふ、と頭を上げたその唇を奪う。
不意打ちのキスに少しだけ暴れた細い腰を引き寄せれば、すぐに体を預けてくる。

オレを振り回す年上の恋人。
けれど可愛くて仕方がない。

柔らかい唇を食むようになぞって、緩やかに頭を撫でて。
嫌だとか言いながら、やたら甘い息を吐くお前は本当にたちが悪い。

しょうがないからオレが折れてやるよ。
お前の「やだ」にオレが慣れてやる。

(けどオレはお前が慣れるのを待っててなんてやらない)

まあとりあえず、

「大好きだよ……」
「――っ…!」

まずはもっとオレにドキドキして。



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