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2013.3.8妄想【央撫中学生日記】


卒業生が全員で歌う【仰げば尊し】を、檀上の袖口で聴いていた。
隣には少しだけ目を潤ませた撫子ちゃん。

今日は、秋霖学園中等部の卒業式だった。

僕と撫子ちゃんが壮行会委員になったのは、単にクラスの誰もやりたがらなかったから。
まあ放課後に約一か月程度、しかも長時間拘束されるとなればそれも当然のこと。

ただ僕としては彼女と居る時間は心地良かったから、退屈な打ち合わせや面倒な準備すら苦痛だとは感じなかったけれど。

(あっと言う間だったな……この一か月)

体育館に響く合唱に包まれて、そんなふうにぼんやりと思う。
ず、と鼻をすする音に視線を横へと向ければ、彼女は感動の涙を流していた。

卒業まであと一年。
来年のこの日は、僕たちが送られる番。

(そうだ……あっと言う間なんだ……)

一年前君と同じクラスになって、賑やかに、けれど穏やかに過ごした日々は瞬く間に過ぎて行って。
そしてすぐに違う道を歩き出す日が訪れる。

――思えばいと疾し この年月 

「……撫子ちゃん」
「ん?なあに、央」

――今こそわかれめ いざさらば

「僕は君が好きだよ」

いつだって伝えようと思えば伝えられる距離にいるからこそ、今言いたかった。

君が好き。

来年のこの日、また隣に君がいてくれたなら嬉しい。




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