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2012.11.12妄想【レインとポッキーの日】


『どうして、そうやって自分の気持ちから逃げるの?』
『ボクとしては逃げてるつもりなんて無いんですけどねー』

そう言いながらも彼女の目を見れないボクは、やはり逃げているのだろうか。
己の本心を認めようとせずに。

いつだって真っ直ぐにボクを見る彼女に時々苛立って、自分の信念を決して曲げない彼女が時々恐ろしくて。
けれどいつだって彼女の存在はボクにとっての光だった。
ボク自信の望みが変わった今でもそれは同じで、だからやっぱり逃げているつもりなんて無いんだ。

君は光。
望むままに輝かせてあげたいだけ。

「ルーク、どうかした?」
「……え?」
「ぼーっとしてるから、もしかして酔っちゃった?」

鷹斗くんに話しかけられて意識が現実へと戻る。
ジントニックが入っていたグラスの中の氷はもうとっくに溶けてしまっていた。

「あー…すみません、昨日ちょっと遅くまで作業していたものですからー」
「寝不足ならもう寝たらどーですか、先輩。別に律儀にキングに付き合う必要も無いでしょ、きりがありませんし」
「ビショップ……」
「しょんぼりしないでください、うっとーしいんで」

相変わらずの円くんの辛辣な言葉にうなだれる鷹斗くん。
普段通りの光景がやたらと平和に感じた。

「レイン、大丈夫……?」

大人たちがアルコールに酔う中で、ただ一人正常な精神を保つ彼女がボクに問う。
心配そうな表情を浮かべた彼女に、ボクは大丈夫だと笑顔を浮かべた。

今夜皆で飲み会がしたいと言い出したのはこの世界の王様。
図らずとも今日彼がそう提案してくれたのは幸運だった、この最後の夜に。

彼女は明日元の世界に帰る。
ボクが帰す。

その為の準備はもう全て整っていた。
いや、本当なら全てとは言えないのかもしれない。
何故なら彼女の気持ちの整理がまだついていないからだ。
帰りたいと願う一方で、このまま帰るのは嫌だとごねるお姫様。

(けどまぁ、もう遅いんですけどねー)

明日、彼女が帰ったと同時に向こうの世界の時が動き、そしてこの政府はレジスタンスによって崩壊する。
何もかもがもう走り出してしまっていた。

『どうして突然私を帰すなんて言い出したの?』
『レインにとって私って何なの?』
『レインは…あなたは私をどう思っているの?』

無遠慮な質問を投げかける君に、ボクは何ひとつ答えられなかったけれど。
賢い君のことだから、答えられないことが答えだって分かっているのだろう。

それを逃げと呼ぶならば、それでいい。

「レイン…私っ……」
「ほらほら、そんな顔してないで君も楽しんでくださいよー」

何かを言いかけた彼女の口に、円くんが作った棒状のプレッツェルを差し出す。
一瞬戸惑った小さな唇がパクリとその菓子をくわえた。

ぱき、と響く乾いた音に既視感を覚える。
壊れたみたいな、ひび割れたみたいな……

「ねぇ、ルーク?もし本当に具合が悪いなら先に休んでもいいんだよ?」
「……大丈夫ですよー、キング」

綺麗な色のグラスにささったプレッツェルをもうひとつ取って、今度は自分の口に運んだ。
ぱき、とまたひとつ乾いた音を響かせる。
たぶん、この音を聞くたびにボクはこの時の気持ちを思い出すのだろう。

ボクはルーク。
ひとつの駒に過ぎないボクが望むには、君は過ぎた輝きだ。

けれどそんな君に憧れてしまうから、

「面倒なんですよねー……」


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